白夜城ブログ

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 この身代わり生活にも慣れてきて、無事組み分けもゼクセンと一緒になり安堵で気が抜けていた時、知り合いと再会してしまった。
 魔術師で、こちらの事情を知る相手なので問題ない。私の兄弟子に当たる人だ。国に仕えていたのは知っていたが、研究所とか、そう言うところにいるのだと思い込んでいた。
 どうやって再会かというと、彼は私が配属された白鎧の騎士団付きの魔術師だったのだ。付きといっても、普段は顔を合わせることもないし、よほどのことがない限りは実戦に参加したりはしないが、有事には補助をしてくれるらしい。つまりは戦争で、大きな魔法を後ろの方からぶっ放してくれるだけの人、作戦にちょっと知恵を貸してくれる人、程度の関係だ。
「兄弟弟子って、ホーン、お前は孤児で、誰の養子にもなっていないだろう? どうしてそんな」
 一通りの紹介が終わり、ざっと説明を受け、小休憩になると話しかけられ、その会話を聞いていたアスラルは無遠慮に問うた。アスラルは親しくなったからと、強引に私たちを自分の所に引っ張ってきたらしい。下心見え見えだったから驚きはしない。
「私たちの母……院長が彼に手ほどきをしたんですよ。院長は自分の力をすべて子供達のために使う素晴らしい方です。まあ、つまり子供達のために、院長がアルバイトしていたって事ですよ」
 それは本当だ。おばあちゃんはルーフェス様に魔術を教えていた。ただし、治療のためである。ルーフェス様よりはゼクセンの方がよほど魔力が多いので、本当に気休め程度だった。そしてそのアルバイトの延長を私がしていることになる。
「動けるようになってよかったね」
「はい」
 ホーンはおばあちゃんの教え子の中でも優秀だ。見栄えもいいし、品もあるし、一番の出世頭である。
 彼からの支援はとても大きく、そんなに寄付して大丈夫なのか心配だった。本人は身綺麗にできて食べることさえ出来ればそれでいいと言うが、恋人の一人も出来たらお金もかかるだろう。だからずっと皆で心配している。
 ゼクセンの親と、将来はゼクセン自身が寄付金の継続を約束してくれたから、彼の負担も減るといいのだが、それでも寄付はやめないのだろう。私もたぶん同じだから、気持ちはよく分かる。
「でも、騎士になるからと髪を切る必要はなかったんだよ。魔術師でもあるんだから」
 短くなった髪に触れ、性別を知る彼は痛ましげな顔をする。
「別に変わらないし」
「ルーがそれでいいって言うならいいけどね」
 頭を撫でられ、年に一度しか会えないその人の顔を見つめ、安堵する。
 彼はかなり位が高い。部屋には、シャワーぐらいあるかもしれない。さすがに、たまには服を脱いで身体を洗いたくなる。何かと理由をつけて通ってみよう。
「そうだ。ルー、訓練もいいがこっちにもおいで。君は騎士でも、魔術師だ。その力を期待されるだろう。身体ばかり動かしていては、頭が堅くなってしまうよ」
「有り難い。ホーン兄は教えるのが上手いからな、是非これに教えてやって欲しい」
 私は子供特有の曇り無き純粋無垢な笑みを兄に向ける。背が高いのでかわいげがないが、私はまだまだ子供である。天真爛漫なのだ。
「いや、その、僕は……」
 ホーンはゼクセンのきらっきらした瞳を見て押し黙る。彼は子供に弱い。もうそれなりの年齢だが、こうも子供っぽいこの少年に、こんな純粋な憧れの目を向けられたら──
「よ、よければ、君も一緒においで」
 この男にあらがえるはずがない。
 分かっていたことだ。
「るーちゃんのお兄さんなら、僕にとってもお兄さんだよね。これからよろしくお願いします」
 兄呼ばわり。
 ホーンはうぐっと唸り、それはもう可愛らしい純粋な少年の目に、負けた。
 完敗だ。
 勝てるはずがない。
「お前等、休憩中だから和むのはいいが、脱力するような和み方をするな」
 式典のような物は先ほどやった。この後祝宴が開かれるらしいから、おそらく今日は顔合わせだけだろう。
 女性も来ない内々の祝賀会だから、粗暴なものになりそうだ。
「ホーン兄も祝賀会には出るの?」
「君が望むなら」
「絡まれたくない」
「では強面数人を引き連れていこうか」
 ちらとホーンはゼクセンを見る。女性がいないと、どうしても華やかな容姿の少年がからかいの的になる。からかいですめばいいが、人は酒が入るとどうなるか分からないものである。
 他の先輩方も、それがいいそれがいいと、一様に頷いた。


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2008/01/13   詐騎士   22コメント 0     [編集]

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