白夜城ブログ

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 今日も訓練(?)にいそしんでいた。
 そんなおかげで私も剣が様になってきた。力はいらないから型の問題なのだが、一定の姿勢をとるのは骨が折れる。物もふわふわ浮かせるのは楽でも、一カ所に固定させるのはとても難しい。こればかりは維持していると身体が痛くなる。
 そんなささやかな苦労と達成感を覚えながら、あと数日で様子見期間が終わり組み分けなどと心の中で呼んでいる、隊分けが行われる。
 何騎士団に所属するかで、未来は大きく変わる。
 私は互いを補助し合えるゼクセンが一緒でないなら長く保たないと断言しているので問題ないだろう。
 今一緒にいる連中とも別れて、西側と東側で訓練している連中と混じることになる。始めに見た内の何人かはもう脱落していることだろうから、多少減っていそうだ。
 それである程度慣れてきたら地方に派遣される。
 そうなれば私も気が楽になる。こっそり抜け出しやすくなるし、女装すれば大手を振って風呂にも入れる。切った自分の髪をカツラにしてもらったから、もしもの時に使える。
 そんな事を考えていると、周囲がざわついた。
「姫だ」
 誰かが呟く。先輩の言葉だろう。新人達は王族など知らないものである。
 しかし私も女だ。お姫様というのには少なからず憧れを抱いている。
 内心うきうきしながら振り返ろうとして、周囲の声が耳に届く。
「不気味姫がなんで……」
「日の光の下に出ても平気なのか」
 どんな姫君だそれはと思いながら振り返る。
 確かに、不気味だ。長い長い癖のある黒髪に、暗がりの中にあっても、黒すぎて逆にはっきり見えそうな黒いローブ。特徴的な、魔物を思わせる色合いをした金の瞳。金の瞳は凶兆と言われ、生まれたときに殺されていた時代もある、そんな不吉の瞳。実際に魔力が強く、悪い物まで引き寄せるためそんな風に言われている。他には魔族の混血も金目が多いのだが、あの姫君は肌が真っ白いのでまず人間だ。魔族の肌は地下に住んでいるのになぜか浅黒い。
 金の目だけでもかなりの特徴なのだが、それを上回るインパクトが彼女にはあった。顔にある引きつった火傷の跡だ。女の子なのに、顔に火傷があって、隠そうともしていない。
 彼女はかなり綺麗な顔立ちをしているのに、身体的特徴と外傷によって台無しにされている、まさに不気味姫。憧れる姫君とはちょっと違う。かなり違う。私が思い描く姫君は、白かピンクのドレスを着た、優しそうだが馬鹿っぽい美女である。それが彼女は暗くて不気味で、知性を感じるのだ。本当に予想外。
 それがなぜだか迷うことなく私の方に向かっていた。
 何かしただろうか。まったく身に覚えがない。
「お前が魔術師」
 物見遊山かこの姫様。
「はい。ルーフェス・オブゼークと申します」
 ぎこちなく騎士の礼をする。平民で女だから、こんな礼をするのは一生ないはずだったので、どうしても優美さに欠ける。
「よい」
 ひどい火傷の古傷がある右手で払う仕草をした。顔にあるのも右側の頬。何があったらこんな火傷をするのだろうか。
「身体を魔力で動かしていると」
「左様でございます」
「どれほど頼っているの」
「杖がなくては歩けないので、普通に歩く分から」
 お前何のために走ってるんだと言われ、リハビリ気分と答えたら親指地面に向けたり、中指を立てられたりした。
「専門は」
「傀儡術です。他は補助と治癒を」
 悪い方に使えば立派な攻撃にもなる術だ。傀儡術はマスタークラスが他にいるとは聞いた事がないので、少なくともこの国にはいない。かなり珍しいタイプの術者である。
「そう。傀儡術だけでもないのね」
 それだけ言うと、彼女はきびすを返して去っていく。
 後で聞いたのだが、彼女も魔術師らしい。王族の姫君で魔術師とはかなりの珍事ではなかろうか。
 実に不気味で不思議な姫様であった。でも姫君には違いないから、顔を合わす機会があったら、ルーフェス様を起こして見せてやろう。きっと喜ぶ。その前にビックリするだろうけど。


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2008/01/12   詐騎士   21コメント 0     [編集]

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