白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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ガートルード の番外編です

3

「今日はお招きしていただき本当に感謝いたします」
 夜会に招いてくれた夫人に感謝を述べる。ガートルードのファンの一人で、世間知らずな彼女のために、二人を招待してくれたのだ。いい方は悪いが、よくいる世話焼き女だ。
 若い娘の誕生パーティのため、堅苦しい場所が苦手なガートルードにも緊張しなくてちょうどよい規模の晩餐会だ。食べるのが難しい物は出ないので、ガートルードが食べるのを躊躇することもない。食事を終えてしまったら踊るも良し、座って軽快な音楽を聴くも良し。人も多すぎず少なすぎないところが、彼女の緊張をとく。
「かまわなくてよ。ガーティは才能があるし可愛らしいもの。わたくしの美術品を彼女にも見ていただけたし、気になさらないで」
 実にありがたい。一番有り難い類の知り合いだ。悪い噂もなく、ずっと付き合いを持たせたい夫人である。ガートルードに必要なのは、彼女のような少し強引なぐらいの気のよい女性だ。
「本当に助かります。あなたのような素晴らしい女性を見習わせたいと、常々思っていました。人見知りをする彼女も心を開いているようですし、感謝は尽きません」
「本当にいいのよ。おかげで恥をかかずにすんだもの。お礼を言うのはこちらよ」
 彼女が招かれた一番の理由は、夫が知人から買ってしまった絵を、ガートルードに見せるためだ。作者の作風と、その絵が違うのが気になるが、鑑定士に依頼をして、もしも本物であった時、相手側に知られれば気まずい。だからこそ若くして知識が広く素直で口の堅いガートルードだ。
 おかげでその作者が無名の若い頃に好んでいた技法で描かれていることまでわかり、ガートルードはほぼ間違いないと断言した。もちろん価値ある、素晴らしい物らしい。
 わざわざ価値が下回る若い頃の作風を真似る意味がない……とは言い切れないが、可能性も低い。贋作だとしても、素人では騙されて仕方がないレベル。なにも問題はない。
「それに、彼女が我が家を描いてくれているのよ。いい話の種になるわ」
 そう、描いている。ダンスなど運動不足の彼女にはまだ望んでいなかったが、大人しくしているのも放棄して、勝手に椅子を持って移動して、楽しげにスケッチしているのだ。この場の雰囲気と、夫人が招いた楽団が気に入ったのだ。
 夫人にとって自慢の場所を気に入られた事で、ガートルードに対する好意はますます深まっただろう。人は、自分の物を気に入ってもらえると、相手に好意を持つ物だ。とくにガートルードは頼まれてもいないのに描く時は、本当に気に入った時だけというのは有名だ。夫人にとってはいい自慢になる。
「彼女は自由にしていても奇異に映らないほど美しいわ」
「変人さを顔で補っているところはありますね。あれで不細工だったら、奇人と天才は紙一重と噂されているでしょう」
 リーンハルトは彼女の描く絵も好きだ。まずは絵に惚れて、次に汚らしいが美しい姿に惚れた。仕事熱心なところも、頑固さも、あの容姿が無くとも褒められる美点であり欠点だ。
 しばらくすると、満足した様子でガートルードが手を止めてリーンハルトの元へと戻ってくる。
「見せてくださらないかしら」
「ただのスケッチですよ」
「かまわないわ」
 日頃鍛えた脅威の写実力によって描かれたスケッチを見て、夫人は感嘆の声を上げる。魔動機のスケッチは上手さ以上に分かりやすさが物を言う。そうやって鍛えられた彼女のスケッチは、異常なほどの出来映えで、そのまま額に飾れるほどだ。
「素晴らしいわ、ガーティ。あんな短時間にこれだけ描けるなんて、天才はやっぱり違うのね」
 当たり前だ。これが女の天才振りの基本だから、努力ではどうにも埋まらない差がある。
「そんなことありません。普通です」
「いやいやいや、これが普通だったら私はお前に仕事を頼まないで部屋に閉じこめている」
 一緒にいたいから仕事を頼むのではなく、有能だから頼んでいるのだ。
「でも、みんなできるって……」
「どこの誰がそんな大口を」
「フーゴさんがおっしゃっていました」
「そいつは嘘つきだ。あいつはお前ほどの腕はない。だったら私がお前に負担をかけてまで呼ぶはずがないだろう」
 彼女はきょとんとして見上げてくる。
 この目が可愛いのだ。この見つめ方が可愛くて諦めてしまう。
「…………はぁ」
「リーン、あなたも大変な方に心奪われたものねぇ。面白いわ」
 端からすればいい見せ物なのだろう。
「ガーティ、目が疲れたろう。気晴らしに庭でも散策させていただくか。好きだろう、庭。いくぞ」
「え、はい」
 有無を言わさず手を引く彼に、ガートルードはドレスの裾を掴んでついてくる。
 とにかく、今は二人きりになりたかった。二人きりに、なりたかったのだ。


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2008/06/16   おまけ   170コメント 5     [編集]

Comment

 

ma473     2008/06/16   [編集]     _

気の酔い女性→気の良い女性
ガーティ相変わらずわが道を行ってますね。それにしてもリーン、苦労症で涙が出ます。

夜凪474     2008/06/16   [編集]     _

知らない人が見ると
リーンが育てているのか、リーンを育てているのか・・・

G475   む~…   2008/06/16   [編集]     _

恋している女性の前では、男はコドモになる。ってか?

こーひーるんば♪(意味不明)

迷い仔猫476     2008/06/17   [編集]     _

ひな?

うなぎ477     2008/06/17   [編集]     _

恋する男の子は大変ですね。
桃色片想いか…(´ω`)


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