白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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 パリルは庭の日陰のところで、桶に手を入れて、それはもう楽しげに笑いながら何かを洗っていた。
 覗き込むと、濡れた細かな水晶を一つ一つ丁寧に磨いて、ざるの上に置いていた。
 洗い終わって、乾かしている途中なのだろう。
「パリル、ごきげんよう」
 カリンが声をかけると、彼女は驚いて顔を上げた。
「ご、ごきげんようございますっ」
 彼女は立ち上がり、どこで覚えたのか知らないが、貴族の女の子みたいなお辞儀をした。
「あら、気付かなかった?」
「はい」
「作っていただいた魔導具の調子はよさそうね」
「はい。軽いのに雑音が聞こえません」
「それはよかったわね。とてもよく似合っているわ」
 首から下げた首飾りを見せてくれた。魔力を帯びた鉱物だが、宝石としては安いのでさして輝くわけではないが、大切にされているようで、青い宝石はぴかぴかに磨かれている。細工の部分も変色したりしていない。
「ちゃんとお手入れしているのね」
「うん。教えてもらった通りにしています」
「大切に磨くと、それに答えてくれるから楽しいでしょう?」
「はい。楽しいです」
 そっかそっか。手入れが楽しいか。
 まあ、人は自分の好きなものに関して手間を惜しまず愛でるものだからね。
 こう大切にしてもらえると、作った本人も嬉しいだろう。
「ところで、パリル、うちのお兄様に何か変なことを教わっていない?」
「変なこと?」
「悪い人の心なら読んでいいとか」
 彼女は首を傾げ、そして横に振った。
「言われてません」
「そう、よかったわ」
「ベナンド様とギル様にやれと言われたときだけにしておくようにと言われました」
 私達の安堵の笑顔が凍り付いた。
「ギ、ギル様? なんでギル様が?」
「ベナンド様とよく来るよ。リゼ様もいっしょに」
 おい、ギル様。つい数年前まで蛇蝎のように嫌っていた男とつるんで、何してるんだっ!?
 しかもリゼを連れてたまに出かけるなって思ったら、子供にそんなことをさせに行っていたとは!
「お、落ち着け」
 リゼをだっこしたラントちゃんが私の上着を引っ張った。
「リゼ様、こんにちは。今日も可愛いですね」
 パリルはリゼの顔を覗き込んで、目を輝かせる。
 ラントちゃんはリゼを地面に立たせた。
「ぱぁーうぅ」
 リゼはパというよりもファに近い発音でパリルを呼び、スカートにしがみついた。
「ほ、本当に覚えてるし」
「リゼ様、もう顔を覚えられてるのですか。さすが殿下のご息女」
 ウルバさんが少し驚いて言う。
 間違っても私の血ではないな。私、人の顔覚えるの苦手だし。あんまり顔の区別付かないし。
「パリル、どんな人の心を読まされたの?」
「えっとね、ドクズの結婚詐欺師とね、ドクズの通り魔とね、あ、ギル様のお兄様の王子様がいるときは横領犯の心を読んだよ」
 私は頭を掻きむしった。
 横領犯のは確実にセレイン殿下だし! あの方、パリルの能力を喜々として使いそうだし!
 しかもなんでドクズとかつけてんの!? 誰が教えたの!?
「ご、ごめんね。ダメな大人達が変なことに巻き込んで」
「楽しかったです」
「え、楽しいの?」
「ドクズを追い詰めるの、とっても楽しいです」
 なぜか目をキラキラさせて語るパリル。
 え……ちょ……この子……
「傀儡術師って、気の強い人多いのかしら?」
「カリンさん、傀儡術師で一まとめにしないで下さいよ! うちの大半は別にクズを追い詰めて生き生きとしませんから!」
 と、近くで見ていたマグリアが抗議の声を上げた。
「あら、ごめんなさい」
「昔はこんな子じゃなかったんですよ。どうしてこうなったのやら……」
「それは知っているわ。知らない人がいると、背中に隠れてきて可愛らしかったわね」
「そうなんですよ。悪さをしてるわけじゃないからどうしようもなくて、まったく……」
 マグリアは深いため息を吐く。
 悪さをした子には情け容赦ない子守歌でお仕置きできるだろうけど、悪さはしてないもんね……。
「あとでギル様を叱っておくよ。これ以上、ギル様に似ないようにしないと」
 たぶんギル様も楽しかったんだろうな。あの人、有能な人材も好きだし、同じぐらい嫌いな相手をいたぶるの大好きだし。
 いや、私も嫌いではないけど、けっこう好きだけど、子供を巻き込んじゃいけないよ。
 本人も楽しんでいようとも。
 この子、将来どんな大人になるのだろうか。
 私は心配だよ。




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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

2016/05/26   詐騎士   1502コメント 2     [編集]

Comment

 

TATA9402   買いました( ^ω^ )   2016/05/28   [編集]     _

特別編購入しました
ニース様の辺りはにやけが止まりませんでした(笑)
表紙のラントちゃんが最高に可愛いかったです
続編の予定はありますか?

とーこ9403     2016/05/29   [編集]     _

ラントちゃんは今回も表紙でいい仕事してますよね

今書いてるのはまとめられたら出してもらいたいと思ってます
いつになるやら


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