白夜城ブログ

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 私が特別親しい同性の友人を上げるとしたら、今はカリンと姫様とウィシュニアだろう。
 実家の子達は友人と言うよりも家族だし、ノイリは友人とは違うし、エリネ様は主だし。エノーラお姉様も一応、身内だし……。
 ……私って、同性の友達少ない? 職場にしかいない?
 いや、それはどうでもいい。
 大切なのは今、親しい友人であるカリンが、何やら思い悩んでいることだろう。
 彼女には悩みの種が多い。そのほとんどが家のことだ。恋に悩んでいる、ということはまずないだろう。悩んでいたとしても、彼女の中で恋愛というのはかなりどうでもいいことになってしまったらしくて、深刻な顔はしないだろうから。
 だから年相応の可愛らしい悩みなんてことはないだろうから、話を聞くのも友人としては大切なんじゃないかと思うのだ。
「カリン、何を思い悩んでいるの? 前に調べた男について?」
 エリネ様の勉強の傍ら、刺繍の手を止めて物思いにふけるカリンに問うと、彼女は曖昧に首を傾げた。
「それなのだけど……」
 カリンは頬に手を当ててため息をついた。
 少し悩むそぶりを見せた後、もう一度ため息をついた。
「……大したことじゃないんだけど、兄が傀儡術師を使いたいって」
「それぐらいいいんじゃない?」
 そんな程度の悩み方には見えなかったが。たまにセルを睨んでたし。
「その中でもね、パリルを使いたいって、餌付けしているわ」
 それを聞いて、さすがに私も戸惑った。
「パリルのこと、理解しているの?」
「もちろん、理解して口説いている最中みたい」
 パリルと言えば、心を読める傀儡術師だ。
 うちで面倒見ている子達の中でも、特に有能な子であるけど、使い方の難しい子でもある。それにまだ幼い。いや、彼女の年の頃には、私もけっこう無茶をしていた気がするが。
「ベナンドみたいなお腹の中が真っ黒な人が、あの子を? 怯えてないのかな?」
「あなたが平気なんだから、今さらお兄様程度の小悪党でパリルに悪い影響があるとは思わないからいいけど」
「え?」
 私のことをベナンドよりは上の小悪党と思っているのか。それとも悪党だと思っているのか。
「お兄様は腹の中の黒さを知られるのが嫌じゃないのかしらね?」
 私の戸惑いを無視して、カリンは首を傾げた。
 実の兄に向かってもひどいことだ。まあ、その通りなんだけど。私も含めて。
「餌付けと言っても、パリルさんはナジカさんと違って食いしん坊ではないでしょう?」
 一緒に話を聞いていたウィシュニアは首を傾げた。
「水晶の細かいのとか、綺麗な石をあげたみたいよ」
 それなら一人だけにあげて不平等ってことはないし、子供ってそれぐらいでも喜ぶからなぁ。パリルはキラキラした物が好きだし。
「それで、何が悩みなの? パリルもお礼をもらえれば喜んで協力してくれると思うけど。何か危険なことなの?」
 私も以前に竜狩りに付き合ってもらったことがある。危険もあったが、周りには有能な騎士ばかりいたから、突発的な事故以外は危険らしい危険もないと判断したのだ。
「なんというか、保護した子を、大人の世界に巻き込むのは、ちょっと悩むわ」
 身の危険で言えば、竜狩りの方が危なかっただろう。
 だが、欲望が絡むと人は平気で人を殺そうとするから、悩ましい。
 パリルは人の心の醜さは知っているだろうが、まだ名誉や金に汚い人間の本当の醜さは、体験したことはないだろうから。
「大切なのは本人の覚悟だろうけど……」
 あの子の使い道がなかったのは、あの子の力が強すぎたからだ。そのままだと力が強すぎてすべての心の声を拾ってしまい、特定の情報をえることはできない。かといって封じてしまえば力が弱すぎて役に立たなくなる。
 だがより高度な技術で作られた上質の魔導具で力を制御する術を得てしまった今、これから先は色々あるだろう。彼女も力を使って自立することを望んでいる。
 だが、ベナンドに使われるのは、どうなのだろうか? ということなのだろう。
 選択肢を加える分にはいいが、狭めるなら悩ましい。
「最近、あの子達のことゆっくり見てないから、たまには様子を見に行きましょうか?」
 するとカリンは笑みを浮かべた。
「そうね。ちょっと顔を出すことあっても、ゆっくり話を聞くことはあまりなかったもの」
 火矢の会の男達の方がよほど彼らをちゃんと見ている。これはよくない。
 あそこはオブゼークの名前がついている慈善院なのだから。




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2016/04/23   詐騎士   1500コメント 0     [編集]

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