白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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3



 その後、帰りの馬車の中でカリンはため息をついた。
 泊まっていくように言われたが、エリネを理由に断った。
 このまま城下の屋敷にもどり、朝になったら神殿に帰る予定だ。
「収穫は何もなかったわね。その方が平和でいいんだけど」
 身につけているテルゼにもらった指輪で話題の切っ掛けを作ったはいいが、噂を知っている女性はいなかった。様子のおかしい女性もいなかった。
「いや、あったぞ」
 ベナンドは事も無げに言う。
「奴の弟が最近妙に羽振りが良くて、何をしているのか不安だと」
 そういうのが欲しかった情報だ。
「まあ、あの方、男性にはまともな話ができたのね」
 カリンが相手をしていたなら、引き出すことは不可能な話題だっただろう。
「何かしでかしたと確信したからだろう。私に相談しておけば、自分は関係ないと証明できる。そして調子に乗っている腹違いの弟を蹴落とせる」
「なるほど」
 セルジアス露骨にニヤニヤと笑った。
「知っているのか?」
「いや、知らない。けど知り合いの知り合いっぽい人はいるよ」
「ぽい?」
「たぶん知ってるだろうなって男。裏を取るのは任せてよ」
 セルジアスは本当の友人は厳選するが、それでも人なつっこい演技をしているため顔が広い。
「どうしてそれぐらいのことでそんなに楽しそうにするの?」
「小娘とぜんぜん関係ないかもしれないけど、他人の弱味を暴くの楽しいだろ」
 その言葉を聞いて、カリンは額を押さえた。
「ははっ、楽しみがある方が捜査が捗ったりするからな」
 と、ベナンドが笑った。
「真面目一直線な奴より、暗い喜びを持っているヤバい趣味の奴の方が有能だったりするんだ。ほら、尾行が得意な奴とか、仕事でなかったらヤバいだろ?」
 納得できる話ではあるが、あまり親しくなりたくない人間である。
「あと、女の子の方にも怪しい子がいたよ」
 カリンは驚いてセルジアスを見た。
「どう怪しかったの? ルゼのファンなんて珍しくないのに、見分けがついたの?」
「んー、どうって言われても困るけど、勘かな? 視線や笑顔はそのままで、妙に指先を動かしていたり」
 セルは指をすり合わせて見せる。
「そんなことまで見ているの?」
「医者に大切なのは患者をよく観察することだからね。患者さんって自分の症状に自覚がなかったり、色んな理由で嘘をつくんだ。悪気もなく、こんなことで人を煩わせるのは悪いからとか、恥ずかしいからとか、怖いからとか、気のせいとか、大したことはないからとかさ。観察して何がおかしいのか見抜けるのって、大切な技術だよ」
 医者の一家に生まれた彼らしい理由だった。
 そのせいで、彼の趣味が人間観察になってしまったのかもしれない。
 彼から見て、カリンはどのように映っているのだろうか。
 庇ってくれようとしたり、助けてくれようとしているから、悪い意味で見ているのではないだろうが、その真意はよく分からない。
 性格が激変したとよく言われるから、そういうのが気になるのだろうか。
 何にしても、気を抜いたりしたところも見られていると思うと、少し恥ずかしい。
「カリン、久しぶりにエノーラさん抜きでああいう場所に行ったけど、どうだった?」
 セルジアスはカリンの目を見て言う。ニヤニヤとは違う、優しげな笑みを浮かべている。
「エリネ様とルゼのご威光のおかげで、皆さん何匹も猫を被っておいでだったから、エノーラさんがいなくても変わりなかったわ」
「今のカリンに嫌みを言う女がいたら、相当の馬鹿だもんね」
「嫌みを言われるぐらいの方が面白いのだけどね」
 昔は嫌みを言われても言い返せなかった。いまなら言ってやりたいと思うことがたくさんある。しかしその覚悟と楽しみができてからは、誰も嫌みなど言わなくなってしまったのだ。
「じゃあ、裏取りの時に一緒に行こうよ。嫌みを言うお馬鹿な子がいるかもしれない」
「よく考えると、そんな子が実際にいたら可哀想じゃない」
 カリンは自分の背後にいる人々の含み笑いを想像すると、いるかもしれないその人が哀れになった。
 普通の人達はそれを知っているから、敵対していても早々嫌みなど言わない。そんな馬鹿なことをする意味などない。いつかその敵が牙を剥く日が来るのだとしても、先に牙を見せてしまったら脅威は薄れる。
 それでも牙を見せるのは、親の言いつけも聞けない頭の足りない子だけだ。
「まるで絶滅危惧種探しみたいだね」
「そんな小動物をいたぶるような暗い喜びを見出さないの。あなたは聖職者なんだから」
「上から目線で説教するのってすごく楽しいらしいよ」
「そんなの、ルゼですら女性相手だと同意しないわよ」
 彼女は女性を追い詰めすぎるのは好きではないようだ。敵対する男が相手なら何してもいいと思っていそうだが。
「うん、カリンらしいね」
 なぜかセルジアスは上機嫌に頷いた。
 彼が何に楽しみを見出したのかは、よく分からなかった。



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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
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2016/04/08   詐騎士   1499コメント 2     [編集]

Comment

 

-9400   管理人のみ閲覧できます   2016/04/11   [編集]     _

このコメントは管理人のみ閲覧できます

おる9401   誤字かと   2016/04/11   [編集]     _

何にしても、期を抜いて ×
何にしても、気を抜いて ◎?

続編楽しみです(*^^*)


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