白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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5

「これを届けに来たんです。私の親戚を介して注文して欲しい物があるとかで、それが今日届いたので。
 これは一体なんですか?」
 中身を知らずに手配させられていたようだ。
 嫌な予感がして、ラルフはそのトランクケースを見つめた。
 アンセルはトランクケースを寝かし、そっと開けた。
 すると中には女の子が入っていた
「に、人間っ!?」
「まさか。人形だよ」
 アンセルは人形を抱き上げた。
 まるで生きているかのような、ラルフと変わらない年頃に見える人形だった。
 可愛らしい白いローブを身につけて、まるで天使のようだった。
「わ、私に何を注文させたんですかっ!?」
「変態御用達の人形職人への仲介を。そういうツテは、貴族でないとなかなかね……」
 イグナスがひっくり返った。
 彼は貴族の三男坊だから、コネがある人と知り合いだったために目をつけられたのだろう。
 それを気にせず、アンセルは人形を椅子に座らせる。
 よく見ると、アンセルはいつもの派手な服ではなく、正式な魔術師のローブを身につけていた。
 それも普通よりはかなり派手だが。
「見たまえ、この完璧な美少女を」
「確かに、すっげぇ美少女ですけど……」
 こんな人間が実在したら一目惚れしてしまうかもしれない。
「ああ、でも僕はこの年頃の少女には興味はないから安心していいよ。
 だけど、天使ならこれぐらいの年頃が手頃だろう?
 高望みは身を滅ぼすからね」
 アンセルは綺麗な青い瞳と、プラチナブロンドの人形に微笑みかけた。
 彼は本気だ。
 形式張ったことはすっ飛ばす彼が、形から入っているぐらい本気だ。
「さあ、ラルフ。そのへべれけ司祭を結界の中へ」
「あ、はい」
 アンセルは今度こそと意気込み、杖を手にする。
「アンセルさんがあんなに気合いを入れるなんて……そこまで天使を呼び出したいのか」
「とっくに呼び出しているではありませんか」
 なぜかラルフについてきて、結界に入れずに困惑する天使達を見上げてイグナスが言う。
「これぐらいの天使様でも、呼び出そうと思ったらどれだけ大変なことか」
 イグナスは天使達を見上げて言う。
「……それを適当にやって呼び出してるんだから、アンセルさんは凄いには凄いよな」
 目標が高いのは、今までそうしてきたからだろう。
 彼は他人に非凡な才能を求めるから、自分が平凡な結果を出すのは許せないのだろう。
 アンセルは息を吐き、魔道書と杖を掲げて呪文を唱える。
 聖句を読み、濃厚な魔力が地下室を支配する。
「どう見ても、魔王を呼び出しているようにしか見えない……」
「確かに。呼び出せそうですしね」
 ──何度か呼び出してますよ。
 と口にしそうになって、なんとか堪えた。
 さすがに街中では呼び出さないで、別荘に行ってやっているが、それでも落ち着いて生活できなくなるだろう。
「この呼びかけを聞き、このアンセル・メイザスに従うならば、この器に入り契約せよ」
 アンセルが魔道書と供に契約書を掲げた。
 いつもよりもいい最上級の紙を使っていた。
 そしていつものように光は契約書に印をつけて、人と見紛う少女の人形が輝いて宙に浮いた。
 天使が降臨する光景の、なんと美しいことか。
 そして──

 人形が落ちた。

「え」
 アンセルのまぬけな声。
 よく見ると、落ちたのではない。服が浮いていた。
「これはなんでちゅ!? 見えないでちゅ! どくでちゅ!」
「まあ、服が絡まっていましゅわ」
「じっとしてるでしゅ」
 ふらふらと宙を漂う服に、他の天使が声を掛けた。
 そして足枷の天使が服を取っ払い、中からは見慣れたちっさい天使が現れた。
「すっきりしたでちゅ。ニンゲン、おまえ、何の用でちゅ? さっさと言うといいでちゅ!」
 その微妙に語尾の違う台詞を聞いて、アンセルは床に膝をつき、絶望するようにうち震えた。
 ラルフは必死に笑いを堪えた。
 床を叩き、必死に耐える。なんとか波が引いて、冷や汗をかいてぜいぜいと息をした。
「な……なぜだ。あの大きさの人形でなぜこうなる!?」
 アンセルは床から天使達を見上げて、憎々しげに言った。
 まさかあの人形で、まったく同じ結果が出るとは思いもしなかった。
 あの天使は姉の人形だとか、そういう次元の話ではなかったのだ。
 なにせ服装でしか見分けがつかないほど、顔と大きさが同じなのだ。
「い、イグナスさん、なんで縮むんですか? しかも同じ顔……」
「さぁ……私に聞かれましても。というか、なんで『でちゅ』なのですか? そんな天使様は初めて知りましたが」
 イグナスはアンセルの背中に尋ねた。
「僕が知るはずない!」
 そりゃあそうだろう。
 語尾以外はしっかりしゃべっているから、呪われているとしか思えない。
 アンセルは立ち上がり、全裸の天使の足を引っつかんで、おもむろにその足に枷をつけた。
「……何やってるんですかっ!?」
 イグナスは慌てて天使に駆け寄った。天使は何をされているのか分からないらしく、首を傾げた。
「なぜこんな物をつけるのです!?」
「見分けがつかないだろう。せっかく契約したのだから、きっちりと代償は払って貰わなければ」
「召喚した側がされた方に代償を払って貰うとはどういう意味ですかっ!?」
「契約したからね」
 と、彼は契約書を見せた。
 契約書には神秘文字によって何か長い……恐ろしい条件が書かれていた。
「私には理解しかねる文章が書かれている気がしますが、どういう意味ですか?」
「つまり、受肉する媒体を与えた代わりに、僕がいいと言うまで形而下に留まるか、嫌ならこの〈天使の書〉を買い取ってねという契約書だよ」
 イグナスが倒れた。しかしすぐに起き上がり、再び問う。
「い、いくらですかっ!?」
「原価で2000。格安だろう」
 また倒れた。
 当然だろう。〈天使の書〉としては格安だが、それでも普通の人の生涯収入を軽く超えている。
 天使達は金額の意味を理解できていないらしく、きょとんとしている。
 そもそも、彼らは金銭について理解しているかさえ疑わしい。




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サンちゃんの人形は、設定してたけど作中ではさすがに書けなかった。
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2014/07/21   書籍番外編   1421コメント 0     [編集]

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