白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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4


 ラルフは今日も納品のためにメイザス魔道書店にやって来た。
「ちわーっす」
 声を掛けながら店に入ると、カランカランとドアベルが鳴り、本棚の上から声が降ってきた。
「あ、この前のオトコノコでしゅ」
 天使の声だった。見上げると、雑巾を手にした天使が本棚の上にいた。
 案の定、こき使われているようだ。
「俺はラルフだよ」
「ラルフはなにしにきたでしゅ?」
 話し方からして、最初に召喚した天使のようだ。
「納品だよ。あんたは何してたんだ?」
「おそうじでしゅ。アクマ臭いって、ニイがいうでしゅ。ニイは綺麗好きでしゅ」
 天使は前と同じ酷い格好で雑巾を振り回した。
「ニイ?」
「もうひとりのテンシでしゅ」
「名前付けてもらったんだ」
「ちがうでしゅ! 名前なんかじゃないでしゅ!」
 ラルフが何気なく問うと、天使は強く否定した。天使の言うことはラルフには理解できそうになかった。
「えっと、それより、まだその格好なのか」
 ボロ布が巻き付けてあるだけの格好だった。
「かっこう? これでしゅか?」
 天使はラルフの目の前に下りた。その左足に何か垂れ下がっていた。
 それをよく見ると、小さな足枷だった。垂れ下がっていたのは重りである。
「んなっ」
 酷い格好なのは予想していたが、ここまでとは予想していなかった。
「なんでそんな……」
「これでしゅ? あのアクマがつけたでしゅ。邪魔でしゅ」
 天使は足を振って鬱陶しそうに言う。
「重くないの?」
「どうしてでしゅ?」
 重くないようだ。だが、酷い格好に足枷までついていると、痛ましくて見ていられない。
「とりあえずその足枷の理由は後で聞くとして、今日は簡単に服を作ってきたんだ。ちょっとこっちにこいよ」
 ラルフは店の奥に行きながら手招きした。すると天使は少し疑って、本棚の上の方を飛んでついてきた。
 最初の人を疑うことを知らなそうな態度からは、とても信じられないほど警戒されている。
「どうしましたでしゅの?」
 ラルフが荷物を広げていると、もう一人の天使もやって来た。
 そっちの天使は、手枷だった。両手に枷をつけられ、その間は鎖でつながれている。
「……うわぁ」
 さすがはご近所さんから『悪魔よりも悪魔らしい』と評価されるだけはある。
「その格好があんまり酷いから、服を作ってきたんだ」
 ラルフは暇な時間を使って作った、簡単な貫頭衣とパンツを見せた。
「ふ、服でしゅ!」
「ありがとうございましゅわ!」
 二人はとても喜んでくれた。
「女の子でもないけど、男でもないから、その格好だと何だろ」
 赤ん坊のようとはいえ、全裸に近いと気になるのだ。
「姉ちゃんに聞いて、練習がてらに何枚か縫ったんだ。パンツもあるよ。あんま上手くならなかったけど」
 天使達は今の服装がよほど嫌だったのか、喜んで服を着替えた。
「サイズは大丈夫?」
「ちゃんと服でしゅ! ぴったりでしゅ!」
「服でしゅわ! 文明を感じましゅわ! イチしゃん、似合いましゅか?」
「似合うでしゅ」
 天使達は大袈裟に喜んだ。
 服装がマシになり、天使達もいくらか天使らしくなったような気がした。
「ところでアンセルさんは?」
「下にいるでしゅ。ヘンな人とケンカしてるでしゅ」
「ヘンな人とケンカ? 誰だろう」
 ドアベルが鳴っても出てこないのだから、本当に口論しているのだろう。
 ラルフは荷物を置いて、隠し扉を開いて地下に下りた。
「いいから、あの手枷を外してさしあげてください!」
「君の指図を受ける覚えはないよ」
「だいたい、一号、二号というふざけた名前は何なんですか!?」
「僕が名付けてしまってもいいのかい? 彼らは名前に縛られるよ」
「それはいけません!」
「我が儘だね。名前と認識されない必要があるんだよ。だったら番号が一番手っ取り早い」
 言い争いを聞いて、イチ、ニイというのが数字であることに気づいて、ため息をついた
「アンセルさん、イグナスさん連れ込んで何してるんですか」
 ラルフが声を掛けると、二人は振り返った。
「おや、来ていたのかい。このへべれけ司祭がうるさくて聞こえなかったよ」
 アンセルは赤毛の若い男を横目で見て言う。彼は天主教会の司祭イグナスだ。
「ん……天使様がた、その奴隷のような服は一体……」
 奴隷のような服と言われ、ラルフはさすがに落ち込んだ。
「これはラルフしゃんが作ってくださった服でしゅわ! とっても文明的でしゅわ!」
「失礼でしゅ! ラルフはいいヤツでしゅ! ひどいでしゅ!」
 天使達は落ち込むラルフを見て憤慨した。
 原始的な服に枷をつけているため、奴隷のような雰囲気と言われても仕方が無いのに気づいた。
「ああ、申し訳ございません、天使様、ラルフくん。確かに先ほどの格好よりはずっと文明的ではありますね」
「どうでもいいですよ。それより、何をしに来たんですか? 借金の返済日は今日じゃなかったですよね?」
 ラルフはじろじろと司祭を見た。彼の足下にはかなり大きなトランクケースが置いてあった。
 これが原因なのだろうと、すぐに察しがついた。



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7/18発売
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2014/07/20   書籍番外編   1420コメント 0     [編集]

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