白夜城ブログ

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 遊んで、着替えている内に時間が来て、ノイリ達は会場へと移動した。
 そこは思ったよりも広く、人も多くて驚いた。しかもノイリの席はエスティーダの側だ。上段の脇から会場の様子をのぞき見て、ノイリは少しぎょっとした。慣れたと思っていたが、ここまで人がいると驚く。
「人がたくさんいますけど、また狙われませんか?」
「狙うはいいが、ここは民家もないから逃げられぬ。しかもおかげで護衛が増えた。なぁ、ラクサ」
 兄妹揃って側で控えている。他にも魔族の護衛が何人か。獣族は皮を剥ぎやすいため、多少下手な化け方でも分かりにくいという理由から、今は遠ざけられている。竜族の二人が一番近いのは、純血の魔族は王位に近いからである。エスティーダが信頼している私利私欲に走らない近衛だけが選ばれている。
「ノイリがおるから、珍しくニアスも側に来たがる。いつもは他の連中と見回りでもしていそうなものなのに」
 ニヤニヤ笑うエスティーダ。
「ティーダ様は、ニアス様と仲良しなんですか?」
「王族同士は交流が増える。昔はよく遊んだな。互いに自由の身であった頃じゃ。
 王族と言えばテルゼはどうしておる? あれに害があるということはなかろうに、隔離されておるのかえ」
 言われてみれば彼はいない。王族なのだから、女王の側にいてもおかしくはない。しかし彼の目立つ姿は見あたらない。
「ノイリが心を許しても困るので離しました。魔族の王族でもありますし」
 ニアスがわざわざそのように手配するほど、テルゼは疑われているのだろうか。理解に苦しむ。
「相変わらずか。あやつの色無し好きにも困ったものじゃ。そのうち北の島まで行くのではないかえ?」
「北の島?」
「この大陸の北にある島の地上には妖魔族がおる。肌の白い魔族じゃ。肌の色以外に差はないようじゃが、こちらとは仲が悪い。であるから、妖魔族と魔族は違う存在であるとされている。
 もちろん、魔族どころか他の種族、地上の者達でもあんなところには行かぬ。攻撃されるからの」
 ノイリには理解できなかった。
 なぜそこまでしてテルゼは色白の女の子がいいのか、理解できない。でもきっと、しなくてもいいことだ。ノイリには一生涯理解できそうもないから。
「ご挨拶をよろしいですか、エスティーダ様」
 魔族の中年男性がエスティーダに耳打ちする。魔族だと年齢が分かりやすいのがいい。獣族は大人か子供かも見分けがつかないときがあるのだ。
 エスティーダは立ち上がり、肩にかけていたショールをうち捨てる。しんとなっている場内を見下し、彼女はふんと鼻を鳴らす。
「今宵はよく集まった。昼間はくだらぬ騒ぎがあったが気にすることはない。
 わらわを弑そうなど、実に愚かなこと」
 少し、場内がざわめいた。この中に首謀者がいるかもしれない。手の者はいるだろう。だから聞かせているのだ。
「わらわは魔王ぞ。弑せるものなら弑してみよ。敬愛なる四区王を見習い、この世の地獄を見せてやろう」
 近くに控えていた当の四区王がびくりと震える。
 ユーリアスはいつも強気に見せているが、外面だけで中身は年相応だとエンダーが言っていた。あれだけ無茶を出来たのは、若さからくる勢いに乗れたかららしい。
「善良なる皆の者、安慮せよ。わらわは逆らわぬ者には寛容じゃ。わらわにどれだけ力があろうとも、善良なる者に振るいはせぬ。
 次からは、治安のためにもその場にて極刑を与えることにしよう。そなたらは何も案ずる必要はない。
 放念せよ。
 わらわは魔の王。天支える柱。
 柱が折れるは、この国が滅びる時のみぞ」
 エスティーダの背中はとても小さいのに、不思議と大きく見えた。
 ただ歌うことしかできないノイリは、このようにただ声を張り上げることは出来ない。だから尊敬する。
「今宵は無礼講じゃ。たんと飲み、たんと食うがよい。
 その前に、五区王自慢の、天上人の歌を披露しよう」
 ノイリは立ち上がった。
 地下の祝いの歌は頭にある。少しどころではなく暗く重厚な音が、エスティーダには似合う気がした。
 楽団が楽器を構えた。
 ノイリはライトアップされた場所に立つ。
 他よりも高い位置から見下ろすホールには、本当に人がたくさんいる。変な人はいない。皆着飾っている。しかし、変装されてはどれが変な人か分からない。難しい。
 だからこそ、エスティーダの周りはよく知っている人が固めている。
 誰が敵なのか分からない。
 ニアスもラクサも区王の親戚で、少し離れたところにエンダーとユーリアスもいた。
 エンダーと目が合い、嬉しくなって微笑んだ。
 始めに祝いの曲と、宴の途中で一曲。
 頑張って歌って、エンダーに褒めてもらうのが少し楽しみだ。

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2008/02/24   窖のお城   14コメント 1     [編集]

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とーこ4     2008/03/06   [編集]     _

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