白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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番外編にしか出ていない、キルスんちのゾンビ執事と、ミゼの婚約者候補であり、人が嫌がることが大好きなクズ使徒のやり取りです。


少女の悲鳴が屋敷に響いた。
掃除をしていた私は、その悲鳴がアリーサお嬢様のものだと気づくと、慌てて玄関に向かった。
「アリーサお嬢様!」
 玄関に辿り着くと、声を荒げてアリーサお嬢様を呼んだ。
「ダリスっ」
 いつも気丈なお嬢様が、半泣きで私の腕に飛び込んできた。
 私は箒を投げ捨てて、お嬢様を受け止めた。
「死霊術師とはいえ、生きた人間の顔を見ただけで悲鳴を上げるとは、それでよく生きていけるな。
 死人ばかりを相手にしていたら、人見知りは治らないぞ」
「お嬢様が悲鳴を上げるのはあなた限定なのですが」
 私は来訪者──光の使徒のアロを睨み付けて言う。
 光聖会の白い聖衣を身につけた若い男だ。
 キルス坊ちゃまと同じ光の使徒であり、キルス坊ちゃまが自分の力を嫌悪するまでになった原因となった男である。
 垂れ目なのに妙に根性が悪そうな顔立ちをしており、お嬢様のように幼い少女が怯えるのも無理はない。実際に彼は根性悪である。
 とにかく、人の嫌がることを率先して行うのだ。
 彼は度々この屋敷にやって来ては、ご一家に嫌われて追い返される。
 これ以上嫌いようがないというほど嫌われていると思っていたら、それ以上の嫌悪があったと教えてくれる存在だ。
 彼は汚らわしい視線を、腕の中のお嬢様に向けた。
「順調に育っているな。本当に、キルスではなくこっちが使徒なら全ては上手くいったのに」
「ひっ」
 下卑た目を向けられ、お嬢様がガタガタと震えた。
 どのような意味があるのか、まだ幼いお嬢様は理解していないはずだが、この視線が気色悪いものだというのは本能的に分かってしまうのだろう。
 彼の視線はとにかく気色悪いのだ。
「それかキルスが女だったらな。気が強いのも、女なら可愛いものだ。見た目は女みたいに可愛いのに、なぜ男に生まれてしまったのか。本当に残念だ」
 こういう男なので、嫌われないはずがない。
 今は本人がいないからまだ良いが、彼は本人に向かっても、なぜ男なんだと会う度に愚痴を言うような男である。
 勧誘に来たのではなく、嫌がらせに来ているとしか思えなかった。
 私が彼を睨み付けていると、アリーサお嬢様は手をハンカチでごしごしと拭い始めた。
「お嬢様、アロ様に触れられたのですか!? すぐに清めなければ」
 年頃の女の子が、嫌いな気持ち悪い男に触れられるなど、ゴキブリに触れられるのと同じほど気色の悪いことだろう。
 この男は、男の私から見ても本当に気持ち悪い。
「ゾンビが生きた人間を汚物のように言うなっ!」
 アロは私に指を突きつけてわめいた。
「私は毎日、身を清めておりますので、アロ様よりも清潔です」
「清潔なゾンビとか、ここの不死者はおかしいだろう!」
「ええ、私達は死者。人の魂、人の習慣を持っているのですから、清潔に過ごすのも、なんらおかしいことではありません」
 不死者が汚いのは、朽ちるから、身を清めないからだ。朽ちることのない肉体を持ち、泥を落とせば、垢も出ないので綺麗なものである。
「キルス坊ちゃまは出張中です。お引き取りを」
 アリーサお嬢様もこんなのがいたら落ち着いて入浴できないだろう。さっさと追い出し、覗かれないように見張りを立てなければ。
「茶ぐらい出せ。おまえのような穢れた存在が用意した物だとしても、食べ物に罪はないから口にしてやろう」
 勝手な要求に、アリーサお嬢様がほほを膨らませました。
「おや、可愛い猫ちゃんですね。前に見た子が産んだのかな。素晴らしい毛艶ですね」
 アロの足下らには、当家の若い猫と遊ぶ若い男がいた。
 動物に好かれる彼だけなら来ても構わないのだが、彼はアロの聖光騎士なのだ。
「キルスがいないのは知っている。僕はここらで魔獣が大量発生したと聞いて見に来たんだ」
「はあ……」
 彼がここに来るのは、キルス坊ちゃまの勧誘のためのはずだ。
 坊ちゃまがいないと知っているのに、わざわざ来るとは何用だろうか。
「キルスがおまえと一緒に退治したと言っていた。明日でいいから案内しろ。そして泊まっていくから寝室を用意しろ」
 私は呆れて言葉を失った。
 いつも追い返されているのに、図々しいにも程がある。
「いや」
 アリーサお嬢様は、低い声で言った。
「と、お嬢様がおっしゃっていますので、お帰りください」
「子供の『嫌』で簡単に人を追い返すな! 無礼な奴だな!」
「旦那様が不在の今、現在のこの屋敷の主はお嬢様です。お帰りください」
 生きている大人がいない今、お嬢様をお守りできるのは私だけだ。
 お嬢様は優秀な死霊術師だが、人間相手には無力なのである。
 私達を人間に差し向けたりできないからなおさらだ。
 私達不死者にとって、光の使徒は天敵であるが、幸いにも私はキルス坊ちゃまのお世話でいくらか慣れている。
 他の隠れていることしかできない、弱い不死者とは違うのだ。
 もちろん、正面から喧嘩を売れば、一瞬で灰にされてしまうのだが、幸いにも私達には、彼らが欲しがっているキルス坊ちゃまがいる。
 坊ちゃまの財産でもある私を勝手に処分などしたら、それこそ大騒ぎになる。
「魔獣をリザイアが殲滅したのは事実です。ですがそれだけです。
 話を聞きたいなら、現地の住人に聞いてください。私は旦那様の命令で、この屋敷とお嬢様をお預かりしている身。
 離れることはできません」
 管理されている不死者にとって、主たる死霊術師の命令は絶対だ。
 人を殺せと言われれば、そうしなければならない。
 もちろん、エルヴァン家の皆様は善良なので、人殺しとなど絶対になさらないが。
「キルスに許可はもらっている。あいつもおまえの主だろう」
 お嬢様は、信じられないとばかりにアロを見た。
「…………では、手紙は?」
 私はアロを見据えて尋ねた。
 光の力に満ちた視線が向けられ、旦那様にいただいた鍔広の帽子でそれを遮る。
「手紙?」
「坊ちゃまが何か理由があってそのようにおっしゃったとしたら、事実であると分かるように血判を押した手紙を用意なさるはずです」
 私はお嬢様を後ろ手に庇いながら、手を差し出した。
「け、血判だとっ!?」
「私達は主の血ぐらい分かります。他人を経由する命令は、血を混ぜたインクを使い、血判を押した手紙でなさいます。それがなければ、赤の他人を屋敷にお通しすることも、ついていくこともいたしかねます」
 アロは私を睨み付けてきた。肌が焼けるような錯覚に襲われる。
 まだ焼けていない。
 ただ、本能的に恐れているだけだ。
「あなたからは、坊ちゃまの匂いはいたしません。私の命令の上書きは不可能です」
 視線の威圧が消えた。彼はアリーサお嬢様を見ていた。
「じゃあ、アリーサ、君も来い。報酬に聖光水晶をくれてやる」
「お嬢様の仕事は留守番です。いくら困っているとはいえ、あなたのようなケダモノがいるのに、お嬢様をお連れするなどいたしかねます」
「誰がケダモノだ。僕は徳の高い聖職者だぞ!」
「え?」
 私とお嬢様とついでに聖光騎士の声が重なった。
「この二人はともかく、ギリル、どうしておまえまで首を傾げているんだ? ああっ!?」
 アロは聖光騎士を牧杖で突きながら問う。
 光の使徒というのは、暴力的になるのだろうか。
 キルス坊ちゃまもどちらかと言えば、言葉より先に手が出る方だ。
「女性の前で暴力を振るわないでください。さあ、お帰り願います。
 さもなければ、うちのお嬢様の心を傷つけた慰謝料を光聖会に吹っ掛けますよ?」
「この程度で誰が払うというんだ。馬鹿か」
 アロは呆れたように言うが、私はその自信のある態度を見て、思わず鼻で笑いました。
「ご自身が光聖会からそれほど信頼されているとお考えなのですか?
 私なら、迷わず金を払って握りつぶしにかかりますが」
 聖光騎士もうんうんと頷いた。
「そうだ。そういたしましょう。聖光水晶の一つや二つぶんどれば、坊ちゃまも助かるはずです」
「ダリスは賢いねぇ」
 お嬢様も賛成のようだ。
「さて、今夜の夕食の支度をしなければなりませんので」
 私は聖光騎士の首根っこを掴んで外に放り出し、お嬢様が近くに投げ捨てられていた箒を使い、アロを外に追い出した。
 鍵を閉めて、屋敷内に警戒態勢を敷く。
 さて、仕事の続きをしなければ。
 さすがのアロでも、聖光会の勢力外で、これ以上のことはしないだろう。
 常に金欠の闇聖堂に、賠償金を吹っ掛けられる可能性のあるような事をすれば、さすがのアロでも叱られるはずだから。



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元々キルスには、アロと名付ける予定でした。漢字にすると鴉鷺。
徹底的に嫌ってもらうために、クズとして書いた彼を、私は大好きです。
こういう性格の悪いキャラというのは、書いてて楽しかったりします。
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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

2013/12/21   書籍番外編   1350コメント 2     [編集]

Comment

 

-9173     2013/12/22   [編集]     _

姫使徒買いました!したたか天然お姫様良かったです。あとアロの挿絵が秀逸すぎました…!性格の悪さが一目で解ります。もちろん褒め言葉です(笑)

とーこ9175     2013/12/22   [編集]     _

ありがとうございます。楽しんで頂けて嬉しいです。
最初のラフだと爽やかイケメンな主人公面だったので、一番拘って修正して頂いたんですよ
イメージとして伝えたのが、弄られまくっていたダークサイドっぽい某聖下の写真でした。
おかげさまで、すごく性格が悪そうにしていただけました!


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