白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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姫使徒様のお気に召すまま+不死者と踊れの番外編です



「キルス様、大変だっ! リザイアにーちゃんがおかしい!」
 書庫に飛び込んできた少年が、血相を変えて叫んだ。
 それを聞いた瞬間、キルスは本を置いて髑髏の杖を手にした。
「リザイアがおかしい? 聖光水晶を与えたのはつい先日ですよ?」
 リザイアはいつも聖光水晶を首から下げているし、リザイアと接触する時は人間側も必ず聖光水晶を持参するようにと言い聞かせているため、聖光水晶がないという事態はないはずだ。
「なんか様子がおかしいけど、まだちゃんとボケてるんだっ」
 少年の言葉を聞いて、キルスは戸惑った。
 リザイアは記憶喪失の屍喰鬼だ。
 ただの屍喰鬼ではない。生きていた時から一人で組織を壊滅に追い込むような、無茶苦茶な実力者である。
 当然不死者としても最上位の力を持ち、厄介なことに人を喰わずにはいられない屍喰鬼となってしまった。
 彼はその忌まわしき食欲を抑えるために、聖光水晶を自主的に喰らっている。
 聖光水晶は並の不死者なら触れるだけでも火に焼かれたような痛みを伴い、喰らえば普通は消滅する。
 しかしリザイアは多少ボケる程度で済んでいるのだ。
 理性を取り戻すほど飢えで苦しみ、飢えを抑えるための副作用でボケる。
 歴史を見ても、類を見ない不死者である。
 だから彼は呆けている限りは安全、知的な事を言い出したら危険という、非常に分かりやすい判別方法がある。
 ボケているのにおかしいとは、これいかに。
「と、とにかく来てくださいよ。なんか、すごく悩んでそうなんですよ」
「悩み……まさか記憶が?」
「かもしれませんよ!」
 今までリザイアを観察して推測できたのは、どうやら光の神を信仰していて、キルスぐらいの年頃の大切にしていた存在がいる、ということ、その他好きだった物ぐらいだ。
 キルスは子供達へ安全な場所に隠れているよう指示を出し、丘の上で空を見上げているリザイアに接近した。
 何が思い悩むような様子に見える。確かにこれは、異常だった。
「リザイア、どうしました。何か思い出しましたか?」
 キルスが背後から問い掛けると、彼は振り返った。
 青い瞳が揺らぎ、わずかな理性が垣間見える。
「おもいだす、ちがう。これは、よかん」
「予感?」
 リザイアは正気を取り戻した時のような、真剣な表情で頷いた。しかし聖光水晶が抜けて回復すれば、もっとはっきりした話し方になるので、聖光水晶の影響はまだ濃く残っている。
「おれ、すごくもったいないことした」
「勿体ない?」
 彼は頷いた。
「いきてたら、きっとすごくいいことあった。しんで、すこしこうかい」
 彼が悔いていたのは、後にも先にも一度だけだった。
 それは他人のためでり、このように自分のために語るなど初めてのことである。
「今までは死んで後悔していなかったのですか?」
「べつに。きるすいる。しあわせ。だけど、いきてたら、べつのしあわせあった、ようなきがする」
 リザイアは訳の分からないことを言ってため息をついた。
「つまり、聖光水晶切れとか、記憶が戻ったとか、そういうことではないのですね?」
 問うと、彼はもう一度空を見上げた。
「おれ…………はらへった」
 この反応なら、大丈夫だろう。彼のこの程度の空腹はいつものことだ。
 キルスは彼の隣に腰掛ける。
 川と、その水面の照り返しを受ける葡萄畑が見えた。
「まあ、おまえほどの男なら、生きていればいいこともあったでしょう」
 背も高くて、強くて、男前だ。そしてドヘタレ吸血鬼のように、女に襲われるほどか弱くもなく、人の心を惑わすほど美しくもない。
 全てに恵まれていた男なのだ。
「でも、だいじょうぶ。おれ、いまは、きるす、ひとすじ」
「いや、僕に執着するのはやめて、さっさと輪廻に戻りなさい。
 死は恐れるものではありませんが、謳歌すべきは生です」
 彼がいるから、キルスは聖光水晶を手に入れるために頭を悩ませているのだ。
「きるすは、かわいいな」
 リザイアはキルスの頭を抱えて、いつものようにぐしゃぐしゃに撫でてきた。
 彼は一体、誰とキルスを重ねているのだろうか。
 これだけ愛している誰かを忘れてしまうなど、彼が哀れで仕方がない。
 だからこそ、こうやって付き合ってやるのだ。


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不死者と踊れの半年後である姫使徒様のお気に召すまま
の頃の話です。
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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

2013/12/19   書籍番外編   1348コメント 5     [編集]

Comment

 

ななしー9172   確かに・・・   2013/12/22   [編集]     _

ネタバレ注意?かな

確かにリザイアはおしい事をしましたね。あのまま生きていたらすごい美人の嫁さんを迎えられていたかもしれないのにwそしてアレイの性別・・・やられましたwとりあえず聖光協会はキルスに対してアロ様関係で生じた誤解から解く努力をしましょうかw

すめし9174   本当に   2013/12/22   [編集]     _

私もそれに気づいた瞬間、「何死んでんだ!?」と口走ってしまいましたwww

-9176     2013/12/22   [編集]     _

アロ様関連の誤解って何でしたっけ?
不死者が手元に無くって……

とーこ9177     2013/12/22   [編集]     _

どこまで気付かれないかなと思いつつ、あの二人の名前を伏せて書きました。
アレイの思考とか行動とか、ネリーの台詞にも、ちゃんと伏線仕込んであるんですよ。

番外編のゾンビ執事とクズ使徒のやりとりで、アロがキルスに聖光会についてどんな印象を与えたかは、だいたい分かるかと。
勧誘に行ったのがミゼだったら、キルスは美人でお姫様な嫁をもらっていた可能性もあります。
二人とも嫁逃がして、寂しい男所帯です。

-9181     2013/12/27   [編集]     _

不死者を読み返して、リザイアがチーズを食べると心が満たされるって書いてあったので、これは!と思いました

また不死者側の続刊が出たらいいのになぁ


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