白夜城ブログ

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魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑 (一迅社文庫アイリス) 魔道書店の稀書目録 ペンの天使に悪魔の誘惑
7/18発売
盗まれた〈天使の書〉の噂を聞きつけてメイザス魔道書店にやってきたジールは、奴隷にのようにこき使われている天使達と出会い、〈天使の書〉を買い戻すために書写師として働くことになる。ジールにだけは優しい悪魔の如き美貌と性格と能力を持つ店主と、天使のような(見た目の)少女の魔道ファンタジー。

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「ニアス、ノイリに怪我はなかったか」
 先ほど襲われていた本人は、戻って来るなりケロリとして言った。自分のことよりもノイリを心配するほどケロリとしている。
「ティーダ様……お怪我ないですか?」
「問題ない。騒がしかっただろう。巻き込まれずによかった」
 ニアスにぎゅっと抱きついていたノイリは、床に下ろされてしくしくと泣いた。
「こ、恐かったです」
 今まで我慢していたが、皆が騒いでとても恐かったのだ。エスティーダが本当に無事でよかった。
「誰ぞ、水と軽い物を持て」
 エスティーダが侍女に命令する。水をもらい、一口飲むと落ち着いた。花の蜜漬けをひとつ口に含むと、疲れが取れたような気がした。
「美味しいです」
「そうか、よかった。
 しかしすまなかったな。近くにいただろう。巻き込んで悪かった」
 ノイリは首を横に振る。巻き込まれたと言うほどではない。一番大変だったのは、命を狙われた彼女だ。ノイリだったら命を狙われたというだけで、きっと涙が止まらなくなる。こんな風に明るく振る舞えない。
 女王陛下はとても強くて立派だ。
「ティーダ様はすごいです」
「当然じゃ」
「でも、女王陛下にどうしてあんな……」
 エスティーダは偉い人なのだ。それがなぜ、あんな目に合うのか理解できない。
「女王だからじゃ。わらわが死ねば、まだ幼い弟が王となる。その方が都合のよい者がおると、ただそれだけじゃ。城の中では手が出しにくいからと、あんな公衆の面前で手を出してくるとは意外であったな。ジジイどもご自慢の結界も破りおって、なかなか愉快であったぞ」
 ノイリは驚いた。エスティーダは本当にすごい。泣くどころか楽しむ余裕まであったのだ。女王陛下とは偉大である。
「緊張感をお持ち下さい。今夜の夜会も中止すべきです」
「何を言う。わらわが城の中でなぜ脅える必要がある。それとも、警備にまた獣の皮を被った者が紛れていると?」
「あの獣族の皮、私は見覚えがあると思っていました」
 ニアスには獣族の見分けがつくようだ。数の多い犬や狼は、ノイリではほとんど見分けがつかない。毛色とか、服装の趣味とか、雰囲気で見分けているのだ。
「死体が出た。皮を剥げば真似られる呪術がある。結界を破る時に、手の皮だけ焼けたのじゃ。闇族の得意とする分野だな」
 闇族で、ノイリはユーリアスを思い出す。乱暴だが、優しい少年だ。
「ユーリアスを疑いで」
「さあな。可能性は無いとは言い切れぬが、あやつは自分の足下を固めるのに必死。わざわざこちらに刺客を放つほど愚かではあるまい。
 それよりも、四区王よりも力の強い者が一人おろう。自分の傀儡を殺したユーリアスよりも、わらわの弟の方が操りやすいと思ったじゃろうな。傀儡の権力はあればある程よい」
 くつくつと笑うエスティーダはとても格好良い。強くて賢くてすてきだ。
「しかし証拠もないのじゃ。捨て置け。闇族がわらわを殺せるものか」
「己を過信しないで下さい」
「そのために近衛がおるのじゃ。まあ、真っ先に来たのがそなたら兄妹であったことは反省点であるな」
 ラクサも近くにいたようだ。
「竜族は瞬発力があるので当然の結果でしょう。それでも一瞬迷い、送れましたが」
「まあよい。わらわは無事。被害もない。何の問題もなかろう」
 そこで話を打ち切り、エスティーダはノイリの手を取った。
「一つの催しと、その後の一つが潰れただけ。最後の一つは行えばいい。毒味役だけあれば、暗殺の心配はあるまい。
 それよりもノイリ、時間まで退屈じゃ。共におれ」
 ノイリはこくりと頷いた。
 ニアスがため息をついていたが、一緒にいてくれるようで嬉しかった。
 本当はエンダーにも一緒にいて欲しかったが、こんな事があってとても忙しくしているようだ。寂しいが、贅沢は言えない。

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2008/02/21   窖のお城   13コメント 0     [編集]

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