白夜城ブログ

7

 魔族が初めて見る魔術で壁に穴を開けた。その奥には通路があった。
「この道をこの者達が掘ったそうです」
 トトちゃんが奥を指さし、地族達が頷く。
 奥を探るが、わからん。元々、迷路を抜けるのに使うには不向きな力だ。元々道を知っていたりすればいいんだけど、先がどうなっているのかまったく分からない所だと、とたんに精度が下がる。
「では、自分達が先を偵察に」
「頼んだ」
 竜族と闇族が先行し、しばらくすると闇族が戻ってきた。
「この先も塞がれています。もう一度お願いします」
「王族の誘拐とはいえ、なんて手間の掛かる事を……いけるか?」
 テルゼは先ほど穴を空けた魔族に問う。
「はい。あと五回は問題なく」
 ここに来ているという事は、かなり優秀な人材なのだろう。それで六回とは、どうやら魔力をかなり消費する術のようだ。
「テルゼ……様はこちらで、エスティーダ様をお願いします」
「分かった。しっかり捕まえているから、いいから行け」
「頼んだ」
 魔族が闇族と一緒に奥へと走っていく。テルゼは本当にエスティーダ様の首根っこを掴んで捕獲した。どれだけ信用のない女王様だ。脱走癖があるのだろうか? うちの姫様も夜中に外に出てしまうお方だ。つまり似た者同士で、気が合ったのか。
 こっちは姫だけど、あっちは王なのだ。気苦労が堪えないだろう。
 しばらくすると再び闇族が戻ってきた。
「比較的新しい、別の道に繋がっておりました」
 ニアスはため息をついて歩きだし、後ろをついてくるトトに問う。
「トト、この先の道は?」
「確か、右が温泉街に続く道かと。左は工事中でございます」
「温泉街に連れて行かれたのか?」
 ニアスは温泉街の方に視線を向けた。
「いえ、そっちじゃありません」
 レイドが真っ直ぐ前を指さした。
「まだまっすぐです。そんなに離れていません」
「しかし、この先は採掘禁止区域なので、何も……」
 そんなのあるんだ。まあ、地下には地下で、水とか温泉とかガスとか色々とあるから、危険だったりするんだろう。
「ぷぎゅぎゅぎゅっ」
 地族の一匹がトトちゃんに何かを訴えた。左の方を指さしている。
「この者が、この先で、別の穴を掘ったそうです」
「ぎゅぎゅっ」
 歩きながら、トトちゃんがじっくりと話を聞き出す。何を言っているのかさっぱり分からんから、じっと待つ。
「どうやらこの者は別の者達と一緒にいる時に、たまたま声をかけられて穴を掘ったようです。そこで、広めの部屋を作ったと申しております」
「部屋か。まだそこにいるかもしれないということか」
「はい」
 街道に突き当たると、地族が勝手に歩いて行き、少し先で足を止めて壁に触れた。そこに道があるのだろう。
「もう一度穴を開けてくれ」
「かしこまりました」
 魔族は地族のいる場所に走り、壁に手を触れた。
「……ちょっとまって」
 レイドが呟いた。
「どうかしたか?
「動い……てる?」
 動いている。何がとは、言うまでもない。
「まさか、こっちの動きに気付いて逃げてるのか?」
「おそらく、気付かれました。このような団体で接近したら、相手も気付きやすいでしよう。どこか別の抜け道がまだあるんだと思います。どちらかといえば、右側に移動中」
「温泉街から逃げる気か」
 人が多いなら、紛れ込んで逃げやすいだろう。
「レイドは道をまっすぐ進んで、抜け道の先を探してくれ。俺は後ろから追う。お前達、半分に別れるぞ。地族達はレイドと一緒に行け」
 テルゼの指示をうけると、皆はすぐさま行動した。
 私はもちろん追う側だ。
 姫様達は……私達の方についてきた。できれば、どこかにいて欲しいんだけど、説得している暇はない。

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2012/12/29   詐騎士   1256コメント 1     [編集]

Comment

 

とーこ9007     2012/12/29   [編集]     _

これで捜索は終わりで、次で哀れな雄姫様とクロトの追跡です。


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