白夜城ブログ

2の続きです。 3

 ウルは拒絶するユイを見て頬を膨らませる。
「まったく。これだから軟弱な若造は……」
 若造──
 相手の見た目は子供だから、何とも言えない気分だ。
「それに君、もっと寿命の長そうなのを支配しなよ。君の命はミラの命だよ。君ならまだ十匹ぐらいいけるでしょ」
「いけませんよそんなに!」
「まあ、悪魔を支配するのは無理だろうけど」
 当たり前だ。悪魔は一匹支配できる器を持っているだけで重宝される。ユイは上級の悪魔でも支配できる器のため、天才と呼ばれ、悪魔らしきモノがいる場所に派遣された。その結果が悪魔と呼ばれた人間である。
「寿命的には悪魔か竜を一匹持ってる方がいいんだよね。まあ、半悪魔も親によってはかなり寿命長いけど」
 イスに浅く腰掛けたまま固まって動かないハノを見つめる。元来のハノは出生のため人目を過剰に気にするタイプだ。最近は固まることもなくなっていたのだが、さすがに堕落のウル相手では緊張するらしい。
「……ウル様、あまり見つめると可哀相ですよ。人の世で育った半悪魔は他人嫌いが多いですからね」
「知っているよ。脅えているね。さすがに格の違いが分かるのかな。これの親は誰か分かる?」
「さあ。ここ三百年ほど他の連中とは連絡を取っていませんから。ウル様を恐れて向こうからは近づきませんし」
 それはそうだろう。それなりに高位の悪魔と竜を抱えて、まだまだ余裕がたっぷりとある。あと一匹ぐらいは確実に支配できる。同族と竜を相手にしてまで、彼と関わりを持つのは自虐行為と言えよう。
「そう。ああ、しかし、まったくもって腹立たしいね。
 このボクの半分ほどの器なんて、どれぐらい稀なこと?」
「さあ。私は存じません。ウル様は並の神子の数十倍と言われていますが、その半分ですからね。まっさらな状態だったら、私とトロを支配することも可能でしょう。歴史上にはそれぐらいの器はいたかもしれませんが、悪魔と竜を支配する前に、それなりの小物を何匹か捕らえてしまうと両方は無理ですからね。まずそんなことを試してみようとする思い上がりがいなかったのでしょう。ウル様のようにここまでため込んでもまだ余裕がある方がおかしな事ですから」
「そうなんだ。ムカツクね。男だってのがさらに腹立たしい」
 ユイは額の汗をハンカチで拭う。こんなに冷や汗をかくなど初めてだ。大司教の前に引っ立てられた時ですらこんなに汗をかかなかった。
「もしもミラに何かしてみろ。生かさず殺さずで地下に監禁するからね」
 ミラは、なぜ数少ない交流相手にこれを選ぶのだろうか。
 せめてもう少し、大人しくて無力で可愛らしい子でもいいではないか。
「ででで、出来ると思いますか?」
 ウルは理解していないミラを見つめる。男女のことは知っているのだが、それに関しては信頼されているらしく、ウルの言葉を理解していない。信頼されている理由はユイが彼女よりも年下であることと、今までの態度が原因だろう。恐ろしくて彼女に悪さをするなど今のところは考えられない。
「まあ、君みたいなタイプには難しいだろうね。支配者だとしても、格の違いは理解しているようで安心したよ。
 支配してしまったものはもうしょうがないから今はとりあえず帰してあげるけど、度々遊びに来ると良いよ。ミラの無事を見せにこなかったら、神殿にまで乗り込んであげるからね」
 ユイの目の前が真っ白になる。
 彼が来る。それはつまり、ヤル気だということを意味するのではないだろうか。
「っ……つ、連れてきますよ。ボクはミラの望むことは基本的に叶えています」
 包丁持たせてあげたり、菓子買ってあげたりと、自分のことよりも金を使っている。彼女はよく食べるから。
「ユイ、中身も少しセトに似ている。ちょっと短気でせっかちなセト」
「そう。変な男でなくてよかったね、ミラ」
 こくりと頷き、微笑むミラ。
 彼女がこんな風に笑うのなら、怖いが、ものすごく怖いが、たまに連れてくるのも悪くない。
 連れてこないと、神殿と全面対決しそうで恐ろしい。ミラがいればどうにかなるだろうが、ミラに友人と対立などさせたくない。
 何よりも、仮初めでいいから自分の目に映る場所は極力平和であって欲しいのだ。

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2008/03/18   おまけ   100コメント 2     [編集]

Comment

 

迷い仔猫36     2008/03/19   [編集]     _

ふっふっふっー!
何故聖良とミラが友人になったとき、ユイがあれほど感動していたのか。
これですっきりしました。
少しは女の子らしい格好にいじってくれるから、野生児からの成長が嬉しい親の気分?

でもこっちのミラはウルに対してあまり警戒していないよね?
青色吐息のほうではハリネズミっぽいのに。

とーこ37     2008/03/19   [編集]     _

ミラも初めて出来た守らなきゃいけないような気がする大切な人ですからね。
しかも、トラブル体質なので、ほっとくとウルに取られますし。
ウルに取られたら、気軽にずっと一緒にいられませんからね。
ミラも必死です。


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