白夜城ブログ

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 街は様々な魔物で溢れていた。
 普段は綺麗な魔族が気取って歩いている街も、頭がおかしくなりそうなほどぎゅうぎゅうと、様々な魔物が列を作るように流れている。
 大まかな分類で言えばいつも見ている種族ばかりだが、竜族にだってニアスとヘイカーのような違いがあるのだ。獣族など幅が広すぎて知っているような者を見つける事の方が少ない。
 ニアスと手をつなぎ、高い貴賓室からそこを見下ろしていた。
 ここからは、女王陛下の姿も見える。
 身分の高いニアスは、賓客としているのだが、とくにすることもないのでノイリにかまってくれている。エンダーが人と話しているので、一人にしておくのが不安なのだそうだ。ここはそれほど広くないので、あまり使用人を連れてこれないから、これが一番だと言われた。
 ニアスと手をつなぎ、もしもの時のため一緒に備える。
 ノイリにとってはとても楽しい時間だった。
 歌うのは夜なので、昼間は自由である。
「ノイリ、喉の調子はどうだ。環境が変わって、痛くなったりしていないか?」
「いいえ。昨日のリハーサルではとても調子がよかったです。
 お部屋は喉にいいように、加湿してもらって寝ました」
「そうか、よかったな」
「はい」
「水はいるか」
「はい」
 美味しい水をもらい、下を見る。
 たくさんの区民が歩いている。それを見るのがとても楽しい。お城の窓から見るよりもずっとずっと多くて、ドキドキする。これが、みんなの言っていた祭りなのだと。
 彼らはどうしているだろう。一緒に歌った彼らは、何人生きているだろう。
「どうかしたか?」
 ニアスに声をかけられて、慌てて首を横に振る。
「えと、ニアス様、あれはなんですか?」
「あれ?」
「あそこで売っている物です。美味しそうに食べています」
 ここから見えるところに、人がたくさん並んでいる店があった。湯気が上がっていて、温かそうな食べ物である。
「欲しいか?」
「いいえ。ここに来てからよく食べるので、これ以上は死んでしまうから……」
 食べてみたい物はたくさんある。だが、それらを欲望のまま食べていては死んでしまう。多少の暴食なら消費してしまえばいいのだが、それでは追いつかないこともあるのだ。
「お砂糖と小麦と油が太らなければいいのにって思います」
「はは。女は喜ぶだろうな。
 でもそれだと男は悲しむぞ」
「なぜです?」
「身体を動かすから、適切な栄養は必要だ。そしてそれらは美味い方がいい。美味いものが食べる意味を無くしたら、私は困るな。油も砂糖も好きだから」
「そうですね。身体が動かなくなってしましますね。まったくないと困ります」
 ノイリは自分の言葉にうんうんと頷く。
 ありすぎても困るが、なくても困るのだ。
「まあ、兄貴にとってはそういう物の方がいいんだけどな」
「はい。エンダー様はもっとお痩せになられた方がいいと思います」
 頭を撫でられ、ノイリはストローで水を飲む。
 柑橘類の香りがする水で、ノイリはこれが好きだ。貴人に出すには水一つにも手が入れられるらしい。
 エンダーのおかげで、そんな水が飲める。
 ノイリは幸せ者だ。だからエンダーには痩せて長生きしてもらいたい。

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2008/02/16   窖のお城   10コメント 0     [編集]

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