白夜城ブログ

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2008/02/24   窖のお城   14コメント 1     [編集]

3

「ニアス、ノイリに怪我はなかったか」
 先ほど襲われていた本人は、戻って来るなりケロリとして言った。自分のことよりもノイリを心配するほどケロリとしている。
「ティーダ様……お怪我ないですか?」
「問題ない。騒がしかっただろう。巻き込まれずによかった」
 ニアスにぎゅっと抱きついていたノイリは、床に下ろされてしくしくと泣いた。
「こ、恐かったです」
 今まで我慢していたが、皆が騒いでとても恐かったのだ。エスティーダが本当に無事でよかった。
「誰ぞ、水と軽い物を持て」
 エスティーダが侍女に命令する。水をもらい、一口飲むと落ち着いた。花の蜜漬けをひとつ口に含むと、疲れが取れたような気がした。
「美味しいです」
「そうか、よかった。
 しかしすまなかったな。近くにいただろう。巻き込んで悪かった」
 ノイリは首を横に振る。巻き込まれたと言うほどではない。一番大変だったのは、命を狙われた彼女だ。ノイリだったら命を狙われたというだけで、きっと涙が止まらなくなる。こんな風に明るく振る舞えない。
 女王陛下はとても強くて立派だ。
「ティーダ様はすごいです」
「当然じゃ」
「でも、女王陛下にどうしてあんな……」
 エスティーダは偉い人なのだ。それがなぜ、あんな目に合うのか理解できない。
「女王だからじゃ。わらわが死ねば、まだ幼い弟が王となる。その方が都合のよい者がおると、ただそれだけじゃ。城の中では手が出しにくいからと、あんな公衆の面前で手を出してくるとは意外であったな。ジジイどもご自慢の結界も破りおって、なかなか愉快であったぞ」
 ノイリは驚いた。エスティーダは本当にすごい。泣くどころか楽しむ余裕まであったのだ。女王陛下とは偉大である。
「緊張感をお持ち下さい。今夜の夜会も中止すべきです」
「何を言う。わらわが城の中でなぜ脅える必要がある。それとも、警備にまた獣の皮を被った者が紛れていると?」
「あの獣族の皮、私は見覚えがあると思っていました」
 ニアスには獣族の見分けがつくようだ。数の多い犬や狼は、ノイリではほとんど見分けがつかない。毛色とか、服装の趣味とか、雰囲気で見分けているのだ。
「死体が出た。皮を剥げば真似られる呪術がある。結界を破る時に、手の皮だけ焼けたのじゃ。闇族の得意とする分野だな」
 闇族で、ノイリはユーリアスを思い出す。乱暴だが、優しい少年だ。
「ユーリアスを疑いで」
「さあな。可能性は無いとは言い切れぬが、あやつは自分の足下を固めるのに必死。わざわざこちらに刺客を放つほど愚かではあるまい。
 それよりも、四区王よりも力の強い者が一人おろう。自分の傀儡を殺したユーリアスよりも、わらわの弟の方が操りやすいと思ったじゃろうな。傀儡の権力はあればある程よい」
 くつくつと笑うエスティーダはとても格好良い。強くて賢くてすてきだ。
「しかし証拠もないのじゃ。捨て置け。闇族がわらわを殺せるものか」
「己を過信しないで下さい」
「そのために近衛がおるのじゃ。まあ、真っ先に来たのがそなたら兄妹であったことは反省点であるな」
 ラクサも近くにいたようだ。
「竜族は瞬発力があるので当然の結果でしょう。それでも一瞬迷い、送れましたが」
「まあよい。わらわは無事。被害もない。何の問題もなかろう」
 そこで話を打ち切り、エスティーダはノイリの手を取った。
「一つの催しと、その後の一つが潰れただけ。最後の一つは行えばいい。毒味役だけあれば、暗殺の心配はあるまい。
 それよりもノイリ、時間まで退屈じゃ。共におれ」
 ノイリはこくりと頷いた。
 ニアスがため息をついていたが、一緒にいてくれるようで嬉しかった。
 本当はエンダーにも一緒にいて欲しかったが、こんな事があってとても忙しくしているようだ。寂しいが、贅沢は言えない。

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2008/02/21   窖のお城   13コメント 0     [編集]

2

 式が始まった。
 魔族の女性が踊っている。薄紅の衣装がひらひらと舞っていて綺麗だ。それが終わると女王陛下へと赤い服の男が何かを渡す。そして輿に乗った女王陛下が大通りを戻る。
 ノイリは祭りのようなものの存在は知っていたが、目にしたのは初めてで、人々の騒ぐ様子が面白かった。
「ノイリ、陛下も見ておかないと、あとで感想を聞かれた時に困るぞ」
「はい。一生懸命見ます」
 ニアスが頭をかき、ため息をつく。
 女王陛下はとてもお綺麗だ。しかし何をしているのか理解できないし、何かしているのは周りだけで、女王陛下本人はただ立って移動しているだけ。何と褒め称えればよいのだろう。
「形式的なもんだから適当に答えていれば問題ないがな。とにかく素晴らしかったと褒め称えておけばいい」
 こくりと頷く。少し話をしただけの方だが、気質程度なら理解した。立っているだけで素晴らしく存在感を感じる方だ。そのようなことを素直に言えばいいのだろう。
 もうすぐ下を通る。
 うきうきしながら待っていると、ノイリの横を何かが通り過ぎた。
 ちょうど下に、女王陛下がいる。
 そこに、横を通った何かが落ちていった。
 女王陛下の頭上に落ちたそれは、ばちりとはぜる結界に阻まれて止まる。
 人だ。服装からして、客としてここに混じっていた獣族である。
 その獣族は突き立てていた刃物とは別に、何かを取り出して結界に叩き込む。
 ノイリはあまりのことに思考が追いつかずに呆然となった。
「ちっ」
 ニアスが後を追った時には、もう結界は崩れ、獣族は女王陛下に迫っていた。そこになってようやく自体を理解したが、ノイリは目を見開くだけでぴくりとも動けなかった。ただじっとエスティーダを見ているだけだった。
「下種が」
 女王陛下が見上げ、唇がそう呟いた。
 その後、目を射るような光を見てしまい、瞼を閉じてしゃがみ込んだ。
 動けるようになったが、何も見えない。
 周りが騒いでいるが、ノイリはそれどころではなかった。目の前が真っ白で、何度か瞬きして、ぼんやりと見えるようになったら立ち上がり、ニアスと女王陛下を捜す。
「ノイリ、大丈夫か?」
 柵に飛び乗ったニアスに問われた。ノイリは驚いて何度も瞬きする。下に飛び降りたのに、どうやって戻ってきたのだろうか。
「だ、大丈夫です」
「あの馬鹿女王、考えもなしにこんな人の多い場所で味方の目まで殺して、おかげで逃げられた」
 苛立つニアスは床に立ってノイリを抱き上げた。
「帰るぞ」
「はい。でも、さっきの……?」
「あのお転婆を殺そうとしてたんだ。獣族のふりをしていたが、今のは魔族か闇族の手をしていた」
「どうして殺そうとしてたんですか? ティーダ様は大丈夫ですか?」
「エスティーダは大丈夫だ。自分の身は自分で守れる奴だから」
 ノイリのいたバルコニーも騒がしかったが、外はもっと騒がしかった。
 人がたくさんいて、ニアスに抱き上げてもらっていなかったら、ノイリなど人波に轢かれて死んでしまっていたかも知れない。
 
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2008/02/17   窖のお城   11コメント 0     [編集]

1
 街は様々な魔物で溢れていた。
 普段は綺麗な魔族が気取って歩いている街も、頭がおかしくなりそうなほどぎゅうぎゅうと、様々な魔物が列を作るように流れている。
 大まかな分類で言えばいつも見ている種族ばかりだが、竜族にだってニアスとヘイカーのような違いがあるのだ。獣族など幅が広すぎて知っているような者を見つける事の方が少ない。
 ニアスと手をつなぎ、高い貴賓室からそこを見下ろしていた。
 ここからは、女王陛下の姿も見える。
 身分の高いニアスは、賓客としているのだが、とくにすることもないのでノイリにかまってくれている。エンダーが人と話しているので、一人にしておくのが不安なのだそうだ。ここはそれほど広くないので、あまり使用人を連れてこれないから、これが一番だと言われた。
 ニアスと手をつなぎ、もしもの時のため一緒に備える。
 ノイリにとってはとても楽しい時間だった。
 歌うのは夜なので、昼間は自由である。
「ノイリ、喉の調子はどうだ。環境が変わって、痛くなったりしていないか?」
「いいえ。昨日のリハーサルではとても調子がよかったです。
 お部屋は喉にいいように、加湿してもらって寝ました」
「そうか、よかったな」
「はい」
「水はいるか」
「はい」
 美味しい水をもらい、下を見る。
 たくさんの区民が歩いている。それを見るのがとても楽しい。お城の窓から見るよりもずっとずっと多くて、ドキドキする。これが、みんなの言っていた祭りなのだと。
 彼らはどうしているだろう。一緒に歌った彼らは、何人生きているだろう。
「どうかしたか?」
 ニアスに声をかけられて、慌てて首を横に振る。
「えと、ニアス様、あれはなんですか?」
「あれ?」
「あそこで売っている物です。美味しそうに食べています」
 ここから見えるところに、人がたくさん並んでいる店があった。湯気が上がっていて、温かそうな食べ物である。
「欲しいか?」
「いいえ。ここに来てからよく食べるので、これ以上は死んでしまうから……」
 食べてみたい物はたくさんある。だが、それらを欲望のまま食べていては死んでしまう。多少の暴食なら消費してしまえばいいのだが、それでは追いつかないこともあるのだ。
「お砂糖と小麦と油が太らなければいいのにって思います」
「はは。女は喜ぶだろうな。
 でもそれだと男は悲しむぞ」
「なぜです?」
「身体を動かすから、適切な栄養は必要だ。そしてそれらは美味い方がいい。美味いものが食べる意味を無くしたら、私は困るな。油も砂糖も好きだから」
「そうですね。身体が動かなくなってしましますね。まったくないと困ります」
 ノイリは自分の言葉にうんうんと頷く。
 ありすぎても困るが、なくても困るのだ。
「まあ、兄貴にとってはそういう物の方がいいんだけどな」
「はい。エンダー様はもっとお痩せになられた方がいいと思います」
 頭を撫でられ、ノイリはストローで水を飲む。
 柑橘類の香りがする水で、ノイリはこれが好きだ。貴人に出すには水一つにも手が入れられるらしい。
 エンダーのおかげで、そんな水が飲める。
 ノイリは幸せ者だ。だからエンダーには痩せて長生きしてもらいたい。

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2008/02/16   窖のお城   10コメント 0     [編集]

29 バレンタイン トキ視点

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2008/02/14   推定家族   9コメント 1     [編集]

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