白夜城ブログ

3

 化粧の力とはすごいと、改めて思った。
 私が日の暮れた街角でそれっぽく立っていると、普通に声をかけられた。
「いくらだ?」
「いくら出せますか? いやだ、ご冗談を。その倍ですわ」
 という具合に片っ端から袖にしていた。ナンパすらされたことがなかったし、《女性》扱いされるというのも生まれて初めてである。だいたい子供扱いだった。髪が伸びていてもたまに小僧とか言われたぐらいだ。
 もっとも、今は街に立つ女が少ないため、私にも声がかかるだけで、平時なら売れ残り一直線だったのだろう。
 改めて売り物になっているのだと再認識する。売れれば金と引き替えに、売れなければ金がない。ここにこうして立つということは、そういう事なのだと理解していても、なんだか嫌な感じだ。
 親無くして育った以上、そういう覚悟も必要な立場だ。たまたまいいところに住ませてもらい、いい才能に恵まれただけで、本当にこういう場所に立つ可能性もあった。それに比べて、今のなんとお気楽な事か。
「もっとうつむいて怨念を発するといい」
 耳元で王子の声が響く。かつらの垂らした髪で隠れるように、通信具を身につけている。だから向こうにはこちらの音声が届き、向こうの声もこちらに届く。そして各所から見張られている。
「だいたい、片っ端からこんな突っぱね方したら、出てくる者も出てきませんよ」
「仕方がないだろう。頃合いになってから立つでは警戒されるし」
「もしも私に目をつけていても、もう警戒してますよ」
「もっとこう、グラのような陰鬱な雰囲気を出せないお前の演技力が悪い」
「何を馬鹿な事言ってるんですか。十分暗くしてますよ。
 だいたい私の演技力は、操った人間に違和感を持たれないように普通にさせるような手のものです。役者じゃあるまいし、そこまで特殊な演技力はありません」
 王子様は傀儡師を何だと思っているのだ。
 確かに初めての経験なので緊張してにこやかに笑ってしまっていたが、今は周りも暗くて遠目では分からないだろう。言われたとおりに頑張ってそれっぽい空気を放っていると、それでもまた声がかけられる。
「君、下を見ていたらだめだよ。もう少し光の届くところでニコニコしてないと」
 聞き覚えのある事に顔を上げたら、その人の手に持つ明かりに照らされるその顔は、知っているものだった。
「アスラル様っ」
 さすがにびっくりした。そして軽蔑した。別に彼がどんなことをしようと、合法であれば別にいいさ。ただ、私が勝手に軽蔑しただけだ。
「え、俺の事知ってるの?」
「え、……は、はあ」
 気付けよこの馬鹿。声質は一緒なんだから。
「なんか緊張してるね。慣れてないのかな。そうだ。近くに美味しい店があるんだけど、どう」
 誰かこの馬鹿を何とかしてくれ。吹っかけるにしても、こいつ金持ちだからあんまり意味ないような気もするし。今こそ助けて王子様っ!
「ああ、もう、回収しろ。撤収だ」
 祈りが通じたのか、王子様も私と同じように考えたらしく、すぐさま撤収命令が出た。
「イエッサー」
 私はアスラル様の腕に腕を絡め、満面の笑みを浮かべて王子達が待つ宿の一室へと戻る。
 そこで王子様は目を爛々とさせて、慣れた手つきで鞭を構えていた。
 捕まえたら拷問する気満々だったのですね王子様。
 私は恐ろしくなりアスラル様を突き出した。
「はぁ? なんで殿下がっ!? って、お前、本物のルーかっ!?」
「なぜ選りに選ってお前が、そんなルーフェスに似た安っぽい娼婦を熱心に口説くのか、納得のいくように説明してもらえないかなあ」
 怒っている。私はささっとニース様の斜め後ろに逃げた。私は悪くない。だって王子様は、こんなのが街に立っていても誰も声をかけないと判断したから作戦を実行したのだ。
「いや、だって、慣れてないみたいで変なのにひっかかったら可哀相だしっ、よく見たらルーに似てて、最近物騒だからほっとけなかったっていうかっ」
「ほう、同情か。しかしそれではこれがもし本物の女であれば失礼だろう。いくら売れ残りそうな不細工とはいえ」
「へ? 不細工を装ってたんですか? ルーは笑うとけっこう可愛い顔してますよ。あ、さてはあれでしょう、娼婦殺しの。やるんならもっとみすぼらしくしないとっ」
 確かに、ドレスは質素だが私の目から見れば十分上等だ。孤児院に寄付される服なんて、もっと悲惨な状態である。
「殿下が知っているレベルは、下の方でも高すぎるんですよ。どうせやるなら髪も汚してほつれさせて、肌も荒れさせて、服も薄汚れたのを仕入れてこないといけませんよ。ルーは若いから肌ぴちぴちですよ。この肌だけで魅力的ですよ」
 自分の肌に触れてみる。確かに最近は昔よりは食べるから肌も綺麗になってきた。姫様の実験とやらを手伝って、いろいろ塗られているし、実際にまだ十二歳の乙女だし、肌はそりゃあいいだろう。
「それに無理してるのが分かるから、なんか構いたくなるんですよね」
「つまり、これは若いし慣れてない感じが初々しく見えると、そう言いたいんだな?」
「そう、そうです」
「老けさせればいいと」
「そうです」
 王子様は私を睨み付け、上から下まで見回し、
「腰に補整下着をつけているな。コルセット以外はとれ。無駄に詰めたパットも入れなくていい。明日は化粧の専門家を呼ぶから仕切り直しだ」
 コルセットなんてしてませんって。
「でも、パット……一つぐらいは入れておかないと」
「仕方がない。一つだけだぞ」
 せっかく気に入っていたのに、外すなんて残念だ。

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2008/01/30   詐騎士   35コメント 0     [編集]

2

 私は紛れもなく女だけど、女物の服は数年ぶりに着る気がする。しかも大人の着る服だ。丈はちょうどいいので、胸にたっくさん詰め物をして、腰に補正下着を着けて、女官に化粧をぬったくってもらい、満足して鏡の前に立っていた。
「殿下ご覧下さい。私たちの手にかかれば殿方だってこの通り」
「ルーさんは元々お顔が小さくて癖のない綺麗な顔をしていらっしゃるから、思った以上の出来ですわ」
 皆が喜んでくれるので、女らしくなった私も喜んだ。
 駆け付けてきた姫様も手放しで褒めてくださる。
 ああ、自分ってちゃんと女の子だったんだと、心の中だけで浮かれた。
 外面はルーフェス様を真似たいつもの私だ。元々話し方とかは男っぽいというか、性格が似たような感じなので何の苦労も気遣いもないのだが、私的にはルーフェス様を真似たつもりの態度で微笑む。けっして、にやけているのではない。にっこりと笑っているのに、何か胸に一物あるような微笑みである。
「王子様、私の女装はどうです。私、綺麗ですか?」
「気色悪いからしなをつくるな。やり直し」
「ひどっ」
 女官に縋り付いてさめざめと泣く。女官は背中をさすって慰めてくれる。
 そう言われると思っていたけどね。あたしゃあ、どーせぶりっこしても気色悪い女ですよ。けっ!
「るーちゃん、こんなに可愛くなったのにダメなんですか!?」
 ゼクセンは可愛いなぁ。ゼクセンは本当に可愛い。私よりも小さいし、なでなでしたくなる。可愛い。
 王子様は私の顔を見て、腰を見て、再び顔を見る。腰は我ながら細すぎるので布を巻いて太くしたのだが、違和感があっただろうか。元々くびれはないが、それでも苦労して少年らしいラインにしたのに。
「まあ……不可でないのは認めてやるが、健康的になりすぎだ。僕らが求めているのは不健康そうな売れ残り娼婦だと言っている。全員が痩せた陰鬱なタイプだ。顔を明るくしてどうするんだ。趣旨を忘れるな」
 なるほど。綺麗になるために、化粧でいつもよりも健康的に見えるのだ。
「じゃあ、シャドーを入れましょう。こうやってこけているようにして、くまをつくれば少しは……」
 女官がささっと手入れされると、一瞬にして少し不健康になった。女官達の腕のなんと素晴らしいことか。
「まあ……それなら。
 もっと少しブスになると思っていたけど、腕がよすぎるのも考え物だな」
 いやいやマジで化粧すごい。これは世の女性が化粧を塗りたくり、人前で化粧を取らない気持ちもよく分かる。楽しいわ。
「本当に素晴らしい技術ですね。それに、パットって思ったよりもさわり心地いいですね。ゼクセン、ほらほら」
「ええっ、いい、いいよっ」
 触らせようとすると首を左右にぶんぶん振る。偽乳なのに。
「もう少し詰めてもいいんじゃないか」
 ニース様が口を挟んでくる。かなり詰めているのだが、まだ詰めろと言うのかこの人は。
「ニース様はやっぱり胸の大きな女性が好みなんですか?」
「詰め物と分かるでかい胸は下品だろう」
「私を下品な偽乳にしたいんですか。
 姫様のは本物ですよね。比べると、さすがに見た目から本物とは雲泥の差ですよね。何にしても天然は有り難がられるものです」
 私は心配して付き添ってくれている姫様と自分を見比べた。彼女は胸を隠して少し後ずさる。羨ましいそれを見て、うっかり自分が男だという事を忘れそうになった。
「ニース様も、男の私を姫様と比べないで下さいねぇ。高いレベルの方と比べても意味ないですよ。姫様はニースさまがお好みなスタイルの持ち主ですから」
「グラは関係ないだろうっ!」
「ええ、分かってます。胸の大きな女性が好みなんですね」
「だから、なぜそうなるっ!? 女などどうでもいいだろうっ!」
 王子様の浮いた話はかなり大袈裟なのをよく聞くが、ニース様にその手の話はない。王子様のは顔のエロさからある事ない事言われているだけだが、ニース様は悪い性格の割には《女性》関係の噂をほとんど聞かない。せいぜい、最近姫様の事で噂されるだけ。それは私という原因がある。
「…………女性はどうでもいい」
 私はずりずり後ずさり、姫様の耳元に顔を寄せた。
「姫様、あの噂はまさか本当なんですか?」
「さあ。でも四六時中一緒よ。一緒のベッドに寝ていたこともあるって聞いたわ。でも私はあの二人のことなんてほとんど知らないから、肯定も否定も出来ないのよ」
 それはそうだろう。彼女は王族だがホーン達と同じ宿舎で寝泊まりしているのだ。大人達は二人を離して育てただろうし、たまに嫌味を言い合う程度の仲である。噂の真相など知るはずもない。
「ちょっと待て、噂とは何だ」
「いえいえいえ、偏見はないんです」
 私はじりじりと後退しながら目を逸らす。
「待て、今の会話はおかしくないか。僕たちにどんな噂があるって言うんだ!?」
 王子様が恐い。目がとても怖い。
「わ、私は知りませんっ! 知りませんっ!
 あ、そうだ! 女性らしく振る舞うために、侍女の皆さんの観察に参りますごきげんようっ」
 なんか狼狽してわめきながら追いかけてくるが、もちろん飛べる私に追いつけるはずもなく逃げ切って、先ほどの発言を新人侍女は見た! とばかりに噂好きの女性達に紛れて吹き込んでおいた。
 女装がこんなところで役に立つとは。
 ああ、楽しい。くせになりそうだ。

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2008/01/29   詐騎士   34コメント 0     [編集]

1

 ある日、いつもの厳しい訓練の最中、ずかずかと寄ってくる王子様とニース様の姿を見た。あの方達も団長と同じくあまり姿を見せない。団長は事務処理や出張が多いからだが、あの人達はさぼりだと皆は言っている。貴族としての、王族としての仕事をしているらしいが、中身は遊びであるらしい。
 今日はなぜだか知らないけれど、勝ち誇った顔をしているような気がする。無理難題でも押しつけるつもりかもしれない。そんな風に私を虐められることで浮かれるほど私はお二人を虐めていただろうか? 何もしなかったらチクチクと虐められるから、その前に悪気がない振りをして退散させていたのが、さすがにまずかっただろうか。
 あの二人をやりこめるという理由だけでも、上司の覚えだけはよくなったのだが、やはりすり寄るのも大切だろうか。何といっても、いたいけな少年に対しておとなげのないお二人である。
 とりあえず私は、無垢な瞳で目の前に立つお二人を見上げた。背の高い男性はいい。ニース様ほどの長身だと、自分の背が平均ぐらいに縮んだような気持ちになる。
「おい、貴様に特別な任務を与える」
 ニース様が嬉しそうに私に人差し指を向けた。
「任務とはどういった内容ですか?」
 ヤバイことでなければここで話すだろう。
「お前のその無闇やたらと貧弱で女々しい容姿が必要だ」
 ゼクセンがかばうような場所に立っている。かばわなくていいから。確かに私にも当てはまるが、あんたにも当てはまってるんだって。
「体格に合う婦人服を探さねばならないから、ついてこい」
 しかし、今度は私ではなくゼクセンに来たか。
 いつか彼にもとばっちりが来ると思っていたのだが、このような手段で来るとは予想外。彼も姫様と仲がいいから覚悟はしていたが、この場合は覚悟の問題ではない。予想外にもほどがある。
「る、るーちゃんは女装なんてっ」
「だからゼクセンだろう、この流れは」
 女顔の自覚がないらしく、この男はまだぼけたことを言う。私が気張って女装したところで、男の姿をした状態のこいつのほうがはるかに可愛いというのに、自覚がないなど、もはや女の敵とも言えよう。
「誰がその男女に女装しろと言った。ルーフェスに決まっている」
「え、私ですか? 今その口で男女と言ったのになんでまた私が?」
 女だとばれた雰囲気ではない。女装させることで笑ってやろうという腹の黒い雰囲気だ。姫様に見せて笑いものにしようという、そういう雰囲気だ。
 ニース様は男を排除するんじゃなくて、もっと素直になった方がまだ可能性があると思うのだけど、相手が魔眼女という世間体を気にしすぎて素直になれないらしい。
 しかし、姑息なことである。
「なぜ私が? 女性に見えなくもないと思いますが、程々に似合っておもしろい出来映えではありませんよ?」
 彼らが求めているのは違うものだろう。指を指して笑うとかを求めているのに、ほどほど似合いそうな私に女装させてどうする。
「ちまたでは連続殺人が起きている。娼婦ばかりを狙った」
「はあ。それでなぜ私が? ゼクセンならともかく、私は女装しても女に見える程度だと思いますよ」
 狙われるとは思えないだ。
「それでいいんだよ」
 王子がにやにや笑いながら言う。ああ、サディストの血を刺激してしまったようだ。どうしよう、恐ろしい。
 私が華奢で殴ったら折れそうだからか、他の騎士にするような乱暴なことをしないのが救いだ。
「凡庸な私には王子様のおっしゃる事の意味が理解できません。王子様の方がきっと似合います」
「そんなことは言われなくても分かっている」
 分かっているのか。自信満々だな。まあ、姫様なんて怪我をしていても美人なのだから仕方がない。
「狙われるのは、街角に立ついかにも売れ残りましたという痩せた女だそうだ。買い手がいなくて立ち呆けているところを狙われる」
 今までで一番むかついた。
 その通りだが、その通りだが腹が立つ。私まだ十二歳の女の子なのにっ!!!
「殺人鬼は恐ろしいが、彼女たちも仕事がなければ生きていけないからな。まだ町に立つ女はたくさんいるが、その中でもそういう女ばかりが狙われる」
「いや、そんな事をここで堂々と話していいんですか? ひょっとしたら犯人がいるかもしれませんよ」
「それはない。町へと脱走した者はいないし、シフトと犯行日時が合う者はこの中にはいない。誉れ高い我が国の騎士が、娼婦殺しなどするはずがないだろう」
 あなたに虐められて鬱憤がたまってそうな人がいるから、そうとも言い切れないと思うんだけど。ニース様の方なんて強すぎて本当に誰も勝てないぐらいだ。
「お前はそこらの石ころも武器に出来る。というか、お前は本来こういう任務の方が向いているんだ。諜報部が喉から手が出るほど欲しいと言っている」
 この力だから、欲しがられているのはおそらく事実だと思う。誰が好んでそんな暗い道を歩むか馬鹿野郎と言いたかった。
「フォローはしっかりしてやろう。世のご婦人の安全のためにも、囮になれ。緑鎖に恩を売るチャンスだ。人材とは、幅広く揃えてこそ価値があるのだと思い知らせてやれ」
 緑鎖とは警察の事だ。元々は騎士団の一つだったために、名前にそれっぽさが残っている。田舎に行くと緑鎖は地元民による自警団のような立場で、魔物退治をしてくれる騎士達の方が立場が強い。だから人の犯罪が多い都会ではそうでもなかろうと思っていたが、まさかそんなに無能だとは思わなかった。
 王子様にとっては私をからかえて、どうやら嫌っているらしい緑鎖に恩を売れて、一石二鳥。
 田舎ならともかく、王都で警察が治安の事で騎士団以下など、ちょっと頭が痛い。
「なんで私がそんなストレスの溜まりそうな契約外の時間外労働を……」
「がめついやつだな。残業代と特別手当ぐらいはつけてやろう。僕も本当はこんな面倒な事はしたくないし、気持ちはよく分かる」
 絶対に自分から首を突っ込んだのに、よくもそこまで言うものだ。
 ここでごねても私の利益になる事はないだろう。不安はあるが、まあ着替えさえ乗り切れば大丈夫だ。
「……わかりました。でも不安だから、ゼクセンもつれていっていいですか?」
 拒否権はないのだろうから、頑張って悲惨な女装をしてみよう。ゼクセンを連れていけば、女だとは疑われもしないだろうし。
 …………やっぱりむかつく。

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2008/01/28   詐騎士   33コメント 0     [編集]

5

 渋々と正装して、渋々とその場に出てきたニアスは、先に来ていたノイリを見て愕然とした。
 あの白くて可愛いノイリが、黒いドレスに身を包んでいるのだ。それでもあの愛らしさは損なわれることなく、抱き上げたくなる。
 現にエンダーは抱きしめてご満悦だ。
 いつもは色素の薄いドレスか、清楚な雰囲気の服ばかりだから、エンダーにとっても新鮮なのだろう。
「どうしたんだ、そのドレスは」
「ティーダ様に頂きました。もう小さいから記念に下さるそうです」
 いつもとは雰囲気の違う、少し濃いめの化粧をした彼女はまた可愛い。髪を左右に分けて黒いリボンで結い、首には黒いチョーカーと、胸元には大きな石のついたブローチ。腕にはブレスレットと指輪もついている。今日はリズィもおそろいのように黒い服を着ている。これがまた可愛い。
「二人とも今日は趣旨替えか。可愛いな」
「まぁ、ニアス様……」
 リズィが照れて身をよじる。
 じっとしていると、作り物のように愛らしい。
 こうしているだけでむやみやたらと何かを買い与えたくなる。
 ストレスが溜まっているのだろうか。普段はむさ苦しい男達に囲まれているから、彼女たちのような愛らしさが癒しになるのだろう。
 女では癒されない。五区ならともかく、一区の女は──いや、ニアスに近づく女は、笑顔の下にグロテスクな物を含んでいて恐ろしい。
 だから彼女たちのように害のない愛らしさに安心するのだ。
 リズィも裏表はあるが、裏の部分もまあ可愛いレベルである。カルティ相手に吼える姿は、むしろ微笑ましい。皆には猫とネズミなのにお似合いだとすら思われている。もちろん本人達は知らないし、意識もしていない。とくにカルティが異性に興味を持たないのだ。あるのかも知れないが、自分には縁のない事と切り捨てているのは間違いない。
「ニアス様、どうぞお席に」
 会場は中庭と呼ばれる、城内で唯一『木』が植えられている場所だ。普通は農園以外にはないのだが、地上の庭を真似て作られた場所だ。小規模のパーティは、ここか小ホールで開かれる。明後日の誕生パーティは偶然建国記念日と重なっているため、盛大に行われる。神殿までを往復してくれるので、警護する側としては大変だが、幸いニアスは祝いに参加する貴族の子息側であり、同僚達とは離れている。つまり一日中ノイリの側にいられる。他の連中に護衛を任すぐらいなら、自分でした方が安心できる。
「ノイリ、今日はどんな歌を歌うんだ?」
「大人の歌です」
「大人の歌?」
「譚詩曲です。さっきおしえてもらいました。明日はパーティの予行練習です」
 さっき聞いたばかりの歌を歌うのか。
 彼女は身が安全なら、どこまでも度胸のある子だ。身の安全がなければきっと挙動不審になるのだろうが、そんなことは起こりえない。それはエンダーの危険も意味しているのだから。
 これなら、当日にもそれほど緊張していないだろう。
「ノイリ、誕生日の日、昼間は退屈だろう。兄貴はきっと人付き合いで忙しいから、俺と一緒にいるか? 貴賓席にでもいれば安心だしな」
「はい! お祭り見ます!」
 ノイリはニアスの提案に目を輝かせた。
 地上の祭りですら知らない彼女はいろいろと誤解している。その様子も可愛いので適度に訂正を入れればいい。夜からは自分も主催者側になるのだから、昼間にしか遊ばせてやれないのが残念だ。
「たくさんの店が出る。美味いものを少しずつ食べような」
「はい」
 女王陛下の手が届かない場所で、振り回されない楽しみも教えてやりたい。
 世間知らずなところも可愛いが、可愛いだけですむのは今の内だけだ。

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2008/01/26   窖のお城   32コメント 0     [編集]

4

 部屋にはドレスが並んでいる。
 ノイリのドレスと、女王陛下のドレス。ノイリのドレスはふわふわで、女王陛下のドレスはきらびやか。
 今夜のささやかな夜会と、明後日のお誕生会のドレスを選ぶのだ。明日はパーティの打ち合わせなので、今の内に候補をしぼっておかないといけない。
 マルタが持ってきてくれたドレスを並べ、彼女の口からどんな原型でどんなアレンジをしたのか説明を受けた。
「ノイリのドレスはノイリにしか着られぬな」
「女王陛下の方が背も高くてスタイルがいいですものね」
 ノイリと違ってはっきりとした凹凸があるのだ。あれでは子供服は着られない。
「わらわの昔のドレスはお前にも着られるか」
 黒いドレスをあてがわれ、女王陛下はうんと頷く。
「こういった趣向もそなたには似合うな」
 そうなのだろうか。初めてなので変な感じだ。鏡を見ても、いつもの自分が黒いドレスを身体の前に下げている。子供服だから黒くても大人が着る物よりは甘い雰囲気がある。
「今宵はいっそ、ふわふわドレスではなく、しっとりとしたドリスはどうじゃ。エンダーは驚くぞ。背中は開いているから着られよう」
「エンダー様は喜ぶでしょうか」
「可愛い事には違いない。喜ぶさ。試しに着てみよ」
 ノイリは着ているドレスを脱いで、黒いドレスをマルタに着せてもらう。黒いレースがついていて、いつもとは違う可愛さがあった。やはり女王陛下のために作られたドレスは趣味がいいし素材もいいし縫製もいい。元々つけていた可愛い花やリボンとも相性がよくて、髪を直してもらうと見栄えがもっとよくなった。
「ノイリは何を着ても可愛いねぇ。エンダー様もきっと喜ばれるよ」
「ドレスがとっても可愛いです」
 鏡の前で後ろを向くと、翼はギリギリ出ている。正面を向くとやっぱり可愛い。
「なんだか、大きな着せ替え人形みたいですわ、ティーダ様」
「ニアスはまこと人形好きだったという事か。人形は主が色づけする真っ白な、いくらでも元に戻して上塗りできる存在じゃ。ここは白く塗られた人形を、黒く染めてみるのも面白い」
 女王陛下がにやにやと笑いながらジュエリーボックスをひっくりかえす。
 言葉の通り本当にひっくりかえした。
「陛下!? そんなことをされてはっ」
 マルタがはわはわと慌てた。ここに入る事を許されている使用人はマルタだけだ。他の侍女達は部屋の外で待機させられている。マルタは可愛いからいいのだそうだ。
 だからマルタはどうしていいのか分からなくなっている。彼女は一介の侍女であり、女王陛下にお仕えできるような経験がないのだ。五区の城にいた女性の貴人はラクサだけで、それでは何の経験にもならな。
「よい。この中には私が乱暴をしても傷つかぬ物しか入っておらん。数年前の物じゃ」
 女王陛下は中から黒いリボンやらチョーカーやらを取り出す。
「女王陛下、どうなさるんですか?」
「私の趣味の良さを知らしめるだけじゃ。
 それと、その女王陛下はやめい。ティーダと呼ぶことを許そう」
「ティーダ様?」
 エスティーダ女王陛下は満足そうに頷いた。王族でも愛称で呼ばせるのだ。

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2008/01/25   窖のお城   31コメント 0     [編集]

6

 季節外れの流行病で、周囲がばたばたと倒れた。
 けろりとしている私とゼクセンは、渋々と対応に追われる。
「っていうかさ、なんで真っ先に倒れそうなお前ら平気なんだ?」
「姫様が作った病避けの薬を飲んでいるからだと思う。つまり実験台だ」
 一番に倒れて一番に復活した友人の問に答える。まあ私も身体が弱いから、本当なら彼の予想するとおり真っ先に倒れていただろう。
「まさかそんなに効いていたとは思わなかった」
「月に一度飲みなさいって言われるんだよ。すごく不味いの」
 ゼクセンでもこれだけは嫌がり、しかし命令に逆らえないので従っている。
「でもすごく高価だ。しかも予防だから、いまさら配っても意味はない。意味があったのは、私が親切で無理矢理飲ませてさしあげたサドコンビだけだな」
「サドはお前だっ!」
 いい事をしたと満足していると、後ろから髪をつかまれ持ち上げられる。
「人を動けなくして無理矢理に口に入れて苦しむ様を観察してから嚥下までさせるなどっ」
 持ち上げられる手に従い、身体を浮かし痛みを緩和する。
「ええい、お前は風船かっ」
 意味がないと知ると手を離す。痛かったのでありがたい。
「王子様、ごきげんよう」
 美形王子に、精一杯の笑みを向けた。これが乙女心というものであろう。けっして危ない気持ちではない。純粋な憧れと尊敬からの笑みである。
「ルー……お前、本当に……なんて恐れ多い事を……」
 同僚が顔を引きつらせる。
 ただ王子様を動けなくして、液体の薬を口に含ませて嚥下するまでを見守っただけである。その時には間違ってはき出せないように口を開かないように支配して、飲み込むのを待っていたのが気にさわったようだ。飲み込まないから親切心で飲み込ませてあげたのに。
 こんな善意を理解してもらえないとは少し悲しい。
 でもあの時は、とってもドキドキした。王子様に対していい事をしていると思うからこそである。すべては善意なのだ。今は理解されなくとも、いつかきっと理解していただける。
「お前の『王子様』は馬鹿にされている気分になる!」
「そんな……憧れの証明なのに」
 王子様には憧れている。見た目だけはとても好きだ。それが乙女心というものだろう。きっと。
「殿下、るーちゃんは殿下のことが大好きなんです。実家にいたときから、王子様とかお姫様に夢見てたんです」
「お前は夢見る乙女かっ」
 その通りだ。何が悪い。心は乙女だ馬鹿野郎。
「るーちゃんは身体が弱いから、小さなころから本ばかり読んで夢見がちなんですっ」
 それは本物のルーフェス様のことだろうに、混同するなと言いたい。私は色々と苦労しているから歳に似合わない超現実主義者だと人からも言われるぐらいだ。
「その身体が弱いというのも信じられないな。真っ先に倒れそうなものなのに」
「だから、完全防備なんですよ」
 私は腕輪に、ペンダントに、上着の裏にと身につけている護符の数々を見せる。
「手作りか?」
「こいつが倒れた頃、姫様が持ってきてくださいました」
 だから元気なので、皆にすりつぶさせた薬草を調合して一人分づつに分けていっている。この単純作業には飽き飽きしている。
「そうだお二方。病に伏した下々の者達を哀れんで、一緒にお薬作りませんか? 薬の知識がある方が手伝ってくださると助かるのですが。身体の弱い魔術師のほとんどがやられてしまい、医者も半分やられて、残った者達がてんてこ舞いです。
 かといって並の騎士はこういう時に役に立たず、女性に指示を仰いで邪魔といわれてるんですよ。使えない筋肉馬鹿どもです嘆かわしい!」
 手伝ってくれているこの二人は、かろうじて飽きっぽくなくて単純作業を手抜きせず丁寧に延々と行う事に文句をいわないでやってくれるのだ。丁寧さが大切なのだ。
「まあ、緊急事態だから手を貸さないでもないが」
 さすがは王子様。サドで外道だが、さすがにこのままだとヤバイと考える程度のおつむはある。
「じゃあ、そこに座ってください。そしてこれをその天秤と釣り合うように小分けして下さい。ニース様はこれを丁寧にすりつぶしてください」
「まて、なんだその単純作業はっ」
 ニース様が机を叩こうとするが、風圧さえ恐ろしいので傀儡術で操り阻止する。
「薬です。タダでさえ不足しているのに、散らばったらどうするんですか。こういう時に短気な方は使えない男と後ろ指を指されるんです。姫様も部屋で延々と似たような作業を続けているんですよ。城内の感染だけで抑えるためにも、この作業は大切なんです。城下まで流行りだしたらどうするんですかっ。その時は姫様に、ニース様の筋肉馬鹿な無能振りをたっぷり語りますからね。それが嫌なら邪魔をしないで下さい」
「ぐっ」
「気が短い人はかえって邪魔なので、運搬でも調理場の野菜の皮むきでも何でもしててください。そしたら役に立っていたと報告して差し上げます」
 王子様は黙って作業を始めた。彼もどちらかと言えばこちら側の人間だ。薬物を扱うような事はあまりしないだろうが、扱った事がないはずがない。ここで何もしなかったら、役立たずの男として誰かが噂を流すのを、よく知っている。
 魔術と縁のないニースは、友人が素直に作業に没頭するのを見て、渋々手伝い始めた。筋肉馬鹿呼ばわりされたのがよっぽど嫌だったようだ。そして、ここでそれに切れて暴れるほど馬鹿でも短気でもない。最低限のラインは越えていないようで安心した。
 気晴らしにもなったし、これで作業効率が良くなる。
 私もそろそろ疲れて飽きてきた。終わったら何か腹に入れて、おもいきり爆睡しよう。

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2008/01/23   詐騎士   30コメント 1     [編集]

5

 騎士の決闘には作法がある。
 1、決められた武器のみ使用(危ないから真剣は使わない)
 なんかこの辺がもうへたれ過ぎていて笑える。
 2、顔、喉、金的など、急所は狙わない。
 なんかもうスポーツだこれは。
 3、胸の紋章を破壊した方が勝ち。
 昔は本物の紋章を使ったらしいが、今は細くて弱い木と丈夫な紙で出来ている。騎士の誇りである本物の紋章を傷つけるなどけしからんといいながら、やっぱり脆くないと相手を殺すつもりで突く事になるから、危険防止の為だろう。脆ければ勝負は比較的簡単に付く。
「…………本当にやるんですか?」
 かなり馬鹿馬鹿しいのに、見物人が凄い。姫様をかけての決闘だと触れ回った馬鹿がいるから。
 それはもちろんゼクセンを中心とした、ここで出来た友人達のことである。
 人の気も知らずに恐ろしいことをする。おかげで、ニース様狙いっぽい若い女性にとっても熱烈に応援されている。
「もちろんだこの卑怯者! 人の食事に毒まで盛るとは、見下げた男だ」
「あ、私にも毒が送られてきましたよ。たぶんしびれ薬だったんですが、使って下さいって手紙が添えてありました。
 だからといって使ってませんよ。やるならもっと上手くやりますから。私が本気でやってたらニース様は今頃ここにはいませんよ」
 ご婦人方は私が卑怯なことをして勝つことを望んでいるらしい。ニース様が姫様をかけて決闘なんて広めるから、姫様に取られてたまるかという、恋する乙女達にとって一番の妥協案だったのだろう。普通に負けるのでは、ニース様にとっては不名誉である。私が卑怯であればある程よい。乙女心の複雑なことか。
「いいから構えろっ。観衆の前で恥をかかせてやるっ」
 うーん。姫君を巡って決闘など、私の柄ではないし、ルーフェス様もやめてと言っている。やめていいらしいのでやめたいが、彼はやる気満々だ。いたぶられそうだ。ルールがあると私は弱い。
「情熱的なんですね」
「意味不明なことを言って、惑わすつもりか。これだから魔術師は」
 情熱的だからこその決闘だろう。そうでなければ、こんな回りくどいことはしない。
 始めの合図は仲立ち人の王子だ。なんかこれがもう不公平感バリバリである。
 王子は鼻を鳴らして笛を口にする。鋭い音が響き、それが合図だ。
 私はしぶしぶと、しかし迷うことなく行動した。
「えい」
 と気合いを入れて、自分の紋章を潰す。
 ニース様こけた。
 だって痛いのは嫌だもん。
「き、貴様、何を考えている!?」
「いえ、なんか姫様をかけての決闘らしいので、私などでは姫様にふさわしいはずもなく、ここは身を引くのが一番だと思いまして」
「何!? なんだそれはっ!? 誰をかけていると言った!」
「え、だってご婦人方がそう言って私を応援して下さるんです。心苦しいのですが、やはり姫様は天上の方。不相応に過ぎます。やはりニース様のような貴公子でないと」
「だ、誰がそんな話をっ」
 彼はこの騒動の本当の意味を聞いていなかったらしい。主催者のくせに噂が届かないとは情けない。彼ほどの身分の者には、下世話なうわさ話を吹き込んでくれる使用人の知り合いはいないのかもしれない。もしくは使用人はわかりきった事として、口にしなかったか。
 とりあえず、私は不思議そうに彼を見つめてみた。
「私が姫様に馴れ馴れしくしているのが気に食わなかったのですよね。本当に情熱的でうらやましい」
 ニース様がおろおろしはじめた。
 サディストを言葉責めなど、滅多に出来ることではない。しかも私は心の底から、いい人として言っているのだ。信じ抜いているのだ。
 ニース様たじたじ。意味が分からず周囲を見回している。
 ああ、なんて楽しいのだろう。
「私は分をわきまえております。ニース様のような立派な騎士になることが夢。ニース様の壁になろうなど、恐れ多い」
 ニース様顔が赤い。
 ついには近づいてきて胸ぐらをつかまれた。私は胸がないから大丈夫だ。その事実がちょっと悲しいけど。
「だれがっ! ってか、浮くなっ」
「浮いてませんよ。ちゃんと地に足をつけてます」
「お前軽いぞっ」
「虚弱体質なので」
 そう言い終えるか終えない内に、ゼクセンが駆け寄ってニース様の腕にしがみついた。
「るーちゃんを離してくださいっ! るーちゃんは昔からすごく身体が弱くて、力もないし、すぐに血を吐くしっ」
 手を離してくれた。血を吐くが効いたのだろうか。ならばこうだ。
「こほっ」
 とか言いつつ、口を押さえうずくまる。
「ち、血ぃ、るーちゃんが血を吐いたっ」
「え、ちょ、そんなっ」
 動揺するニース様。そりゃ、自分が胸ぐら掴んでいた相手がいきなり血を吐いたら驚くし焦る。余裕が出ればざまあないとかいいそうだけど、いきなりだからビックリだ。
「ちょっとニース! 黙って見てれば変な噂を立てるは、身体の弱いルーに乱暴するは、何を考えているの!?」
 様子を見ていたらしい姫様が駆け寄ってくる。
 なんか観衆が盛り上がっている。
「…………体調が悪いなら、始めから言え! 今日の所はこのぐらいにしてやるっ!」
 などと言いながら、ニース様は動揺して去っていく。動揺すると逃げるところが、精神的な面で叩かれ慣れていない貴族の坊ちゃまらしい。
「大丈夫かルーフェス。今すぐに医務室へっ」
 担架を持って救護班が駆け付け、私は汚れた口をぬぐい立ち上がる。
「問題ありません。これはあとで使おうと思っていたケチャップですから。ニース様は冗談が通じない真面目な方なんですね。意外です」
 なぜかその日から、私のあだ名は詐欺師になった。

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2008/01/22   詐騎士   29コメント 0     [編集]

4

 姫様の日課は庭で薬草の手入れをすることだ。温室まであって、薬草の事で不自由することはあまりない。だがたまに不自由することもある。
 私は綺麗な水辺にしかない綺麗な花が咲く薬草の採取を命じられ、ゼクセンを知人に任せて大急ぎで往復した。人が飛べるからって、なんという扱いだと文句を言いたかったが、ルーフェス様のためにぐっと飲み込んだ。
 一つは王太子の解毒に使うらしく、よく知らない執事っぽい人に渡してきた。解毒と言っても、遊びに行った先で間違えて毒のある山菜を食べたらしい。かなり大馬鹿なんではないかと思う。その大馬鹿が私を疲れさせると同時に、上の覚えもよくしてくれた。まあ、結果的にはプラスである。
「ただいま戻りました」
 薬草園で手入れをする姫様に声をかけてから降り立つ。
「お帰りなさい。ごめんなさいね、馬鹿な兄のために。ほっとけば一週間で治るのに、大げさでしょ」
 吐いて下して大変らしいので、仕方がないとも言える。腹違いとはいえあの王子様の兄だが、王子様のように魔力もないし騎士でもないので身体を鍛えてもいない。甘やかされていそうだから、弱音を吐いているのだろう。
「今後のために余分に採取してきましたよ」
「土ごとなのね。上手く育つかしら」
「綺麗で冷たい水とほどよい日陰があれば育つ植物ですからね。姫様なら大丈夫ですよ」
 可憐なつぼみをつけたそれを渡す。
「もうすぐ綺麗に咲きますよ。涼やかな場所で咲く姿は可憐で、姫様っぽい花ですよね」
「あら、よく言うわね。私は日陰の女ってことかしら」
「貴族のご令嬢は外に出ても日陰を作っていますよ」
「貴族の女はみんな日陰者ってことね」
 何か受けたらしく姫様が笑っている。姫様も笑うと可愛い。
「まあ、でも誤食しやすい毒草の解毒剤にしかならない植物に例えるのは失礼ですね。姫様は才色兼備でいらっしゃるから」
「そんなおべっかを言うのはあなたぐらいよ」
「そんなことないですよ。ゼクセンに問えば目をきらきらさせて姫様を心の底から賛美します。うちの地方は魔眼に対してあまり偏見がないですから」
 彼女のような金の目は魔族の瞳に似ているから魔眼と呼ばれる。もちろん魔族の血が混じっているなどデタラメだ。魔力の強さの表れでもあるから、地方によっては誇るべき目とされる。
「私は姫様の目、とても綺麗だと思いますよ」
 綺麗な方の頬にかかる髪を払い、土で汚れた下あごをハンカチでぬぐってやる。土いじりまで自分でするなど、素敵な姫君だ。
「綺麗になりました」
「ありがとう」
 姫様と語り合っていると、なんだか本物の騎士になっている気分になる。ルーフェス様も彼女に淡い恋心を抱いているので、訓練しているときよりも、彼女といるときに視界を欲しがるようになってきた。彼が望むままにするのが私の仕事の一つである。
 姫様の方も性格はいいから意外にもてているのを最近知った。そういった彼女の良さを知る男達は、彼女の兄に怯えて滅多に行動しないだけで、兄の見えないところではアプローチを受けているのである。王子様、どこまで怯えられてるんだろう。
 それに姫様には婚約者もいるらしいから、彼らにとっては高嶺の花過ぎるっぽい。
 ホーンが言うには向こうがベタ惚れしているとのこと。ただし姫様の方はこの傷を理由に婚約を破棄したつもりらしい。
 皆がほどよい距離感だと、心の中で満足していたときだ。
「きさまっ」
 背後で何かが落ちる。私は傀儡術を応用した結界もどきが背後にあるのだ。網のような物だと思えばいい。それに絡み取られて何かが落ちた。
 振り向くと、見知った男前が怒りの形相でたたずんでいた。私の足下には石が落ちている。病弱な私に石を投げるなどひどい男である。
「えと、王子様の腰巾着の人?」
「だれがっ」
「サディスト二号?」
「きさまっ、ふざけるなっ!」
「なんて名前でしたっけ」
 姫様に問うと、彼女は顔をしかめた。
「ニースと呼んでいるわ」
「そう、ニース様ですか」
 背の高い私と比べても長身のいい男なのに、こんなに怒りっぽいなんてもったいない。
「エディアニース・ユーゼ・ロストだ!」
 どうやらすごいお坊ちゃまらしい。ユーゼっていうのは一位の家位。王族の血筋でないと得られない家位だ。
 怒っているので紳士らしく姫様を後ろ手に庇った。
「ニース様、何かご用ですか? 怪我をされたなら医務室に行くことをオススメしますが」
「きさまっもう許さん! 私と決闘しろ!」
 手袋を投げつけられた。身体に触れることなくぽとりと落ちた。
「ここの土、鶏糞とか混じっているから土で汚すことはおすすめしませんが」
 拾って返そうとすると、ニース様は怒って帰ってしまった。
 なんて短気な人だろう。
「拾ったら決闘を受け入れるって意味なのよ」
「そうなんですか? でも、なんであんなに怒ってたんでしょう。声をかける前から怒っていたように思いますけど」
「私に他人が近づくのが腹立たしいみたいよ。友達も虐めてくれるから、あなたぐらい物怖じしない人でないと怯えて近づかないもの。手を出されないのは研究室の者たちぐらいだわ。優秀な研究者まで虐めると支障をきたすから、さすがに叱られるの。まあ、お兄さまにとっては私が邪魔でしかないから、彼も何か周りから言われるみたいで、物心ついた頃からこうよ」
 王子様の足を引っ張る女とか、そういうことだろうか。
 生きるのに必死にならなくていい連中ときたら、本当にくだらない事をする。私には理解できない。



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2008/01/20   詐騎士   28コメント 1     [編集]

3

 朝、いつものように訓練場に行くと、嫌な男達を見つけた。
 あの王子様とお供の、サディストコンビである。
 不気味なだけの姫様と違って実害があるから皆に怯えられている。
 クーデターでも成功したら真っ先に殺されそうな連中だ。逆に姫様は同情を買って生かされそうな気がする。なにせあの傷である。
 その二人は、私の隣で姫様だぁとか浮かれているゼクセンに目を付けた。ゼクセンはあの王子様を見るのは初めてである。
「なぜ女がいる!?」
「男ですが脱がせますか?」
 いつもの反応にいつもの答え。
「脱がせろ」
 初めての反応に、私はちょっとドキドキした。男の子の服を──女の子のように可愛い美少年の服を無理矢理脱がせる。なかなか体験できないだろう。はりきってしまう。
「こらこらこら、いたたまれないからやめなさい」
 滅多に顔を出さないうちの騎士団長のホーニス様が止めに入ってくれてしまった。白髪交じりでヒゲで温厚そうなナイスミドルである。実はちょっと憧れている。あんな人が父親だったらいいのにな、という憧れだ。たまに人を使いっ走りにするところがなければ完璧なのだが、欠点があった方が人間らしい。でも私にとっては迷惑な欠点だ。
「殿下、彼は男の子ですよ。なあ、みんな」
 こくこくこくと頷く一同。
 シャワールームで彼は全裸になるから。私が目を向けると挙動不審になるから見ないと約束しているけど。
 王子様は私が手を止めるとなぜか舌打ちした。ゼクセンは彼らの嗜虐心をそそるタイプなのかもしれない。
「そういえば王子様、何かご用ですか? 姫様は見ていませんよ」
「グラのことは関係ない。今日から僕はこちらに異動だ」
 うわヤなのが来た。絶対に私たちは虐められる。どうしよう。
 などと考えていると、先輩方がなぜか短剣やらを地面にばらまき始めた。何だろうかこの私に使いなさい的行動は。自分の身は自分で守れということか。しかしそれは死ぬぞ。
「ギルネスト殿下、私は初耳ですが」
 団長が不愉快を隠しきれずに少し棘のある口調で言う。
「今朝決まった。異動の時期に忙しくしていたからな」
 普通は団を変わる事なんてない。
 団は派遣される地方が決まっていて、共闘することもほとんどない。しかもこれから寒くなり、南に派遣される彼が元いた青盾の騎士団はうらやましがられる立場にある。
 そこからわざわざ一番いい時期に移動するとは理解に苦しむ。
「ようやくあの重い盾から解放される」
 シンボルの盾がいやだったようだ。
 私達が所属するのは気候的には中間の白鎧の騎士団。寒いし暑いが、極端ではないので比較的過ごしやすい。
 一番過酷なのは赤剣の騎士団。雪の多い地方のため、穴が見つけにくく、雪かきというよけいな作業も待っている。
 平均すれば白鎧は恵まれているが、どうせなら春になってから異動を希望すればいいだろうに、彼はすっかり白騎士様仕様になっている。
 悔しい事に美形の彼らにはものすごくよく似合う。世間には白騎士様と呼ばれるだけあり、白が基調の制服だ。銀の兜が元となっている紋章は、おそらく青盾よりも似合っているだろう。白鎧には美形が多いと言われるのは、その制服によって実際よりもよく見えるのが原因だとも言われている。白とは一定レベル以下の男をより不細工に見せるが、一定レベル以上の男は美男子に見せる力がある。
 どこぞのマダムのご機嫌取りにかり出されることもあるため、実際に美形はここに入れられる。ゼクセンも文句なく白騎士向きだし、私も女なだけあって顔の作りも小さいし、痩せているが悪い方でもないだろう。たぶん。もう少し太ったら可愛い女の子になれるのだと、自分だけは信じてあげたい。
 さらにこの三つの騎士団を束ねる統括とかもあるらしいけど、そこのシンボルと制服はいまいちと有名で、それを嫌って昇進を嘆く者もいるらしい。私には関係ないからよく知らないけど、王子様にはモロ関係があって、似合わなさそうだ。将来は昇進しなくてはならないだろうから、可哀相に。今だけでも格好いい制服を身に纏うといいさ。
「誰か遊んで欲しい者はいないのか。いないのか。そうか。ではそこの貧弱なお前」
 指を指されなくとも分かるほど、貧弱なのは私しかいない。せっかく似合うと心の中で褒めてやっていたのに、失礼な王子様だ。
「魔術師らしいな。治療術はなかなかの腕前のようだが、他はどれほどか知りたい。相手をしてやる」
 普通の相手なら言葉の通りとも取れる。騎士の中でなら魔術の腕は一番だ。治療術が得意なのだから、おそらくかなり期待されている。昨日のでよけいに期待された。重傷者を癒せるのは、自分たちにとっても命に関わるのだから期待するのは当然である。
 しかしこいつは違うだろう。
「あの、ホーニス様? どうすれば……」
「ん、君の実力が知りたいようだから、何をしても構わないのでは? 基本能力が知りたいようだから、わざわざ慣れない事をするのは、かえって失礼だろう。ルーフェスらしくやるといい」
「じゃあそうします。あ、今日は足が痛むので浮いてますね」
 空を飛べる者は世界でも数少ないだろう。小手先の術は得意だが、他の派手な魔術──火を出すとか光線を出すとかは苦手だ。苦手というか、私は初歩の初歩しか出来ないので、そういう事は王子様の方が確実に上だろう。彼は攻撃魔術の火力だけなら国一番らしい。
 このような戦闘の時にどちらが有利かというと、それはもちろん私である。もしもの時は空に逃げられるからだ。
 はいいが、王子様じっと私の足元を見ている。
「たまにせがまれるのですが、飛びたいのでしたら可能ですが」
「誰がそんなことを言った。空を飛びたければ竜に乗る! いいから剣を構えろ」
「はあ」
 竜に乗れるのだ。竜騎士というのも格好いい。本当にもったいない王子様だ。性格が普通なら完璧なのだが、残念だ。
「では」
 さりげに点々と置かれたナイフやらが浮き上がる。さすがに二人はぎょっとして周囲を見回す。
「なんだこれはっ!」
「剣を構えました。他人が落とした剣は私の剣です」
「ふざけるなっ!」
「これが私の飾らない攻撃手段です。穴を埋めるとき、爆薬を奥に運べて便利ですよ」
 当たり前なのだが、さすがに臆している。炎を出したりする場合、多少の時間がかかる。私のは常に発動しているから、ほとんど時間差がない。
「ギルネスト殿下、彼を相手にするときは、周囲の小石まで拾ってからにした方がよろしいかと」
 団長が親切に教えた。
 まったくもってその通り。もしくは対魔術装備で固めてくるのが有効的だ。その時は上から魔術の干渉を受けていない状態の物を落とせばいいのだが、実戦では落として相手が大けがをする大きな石や刃物がそこらにころころと転がっていることはあまりない。が、今の彼らはそんな事を考えている余裕もないだろう。
「ふ……」
 何かを悟ったのか諦めたのか、王子様は髪をかき上げる。泣きほくろのせいか、その仕草はとってもセクシーだ。きっと女性を取っ替え引っ替えにしているに違いないと思わせる色気がある。姫様も普通だったら、男を手玉にする色っぽいお姉さんだっただろうに、もったいない。
「まあ、魔術師としての実力はそこそこのようだな」
 王子様は取り繕うように言う。大人の男性に対してなんだが、ちょっと可愛い。
「以後、この僕が有意義に使ってやるから覚悟しておけ」
 などと格好付けながら逃げた。
 活躍できるのなら別にいいが、雑用だったらちょっと嫌だな。


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2008/01/19   詐騎士   27コメント 0     [編集]

2

 感覚が戻ってきて安定すると、立ち上がりどうしようか迷う。
 挨拶をすべきか、ささっと逃げるか。
 悩んでいると、件の王子様ではなく、不吉で傷物の不気味姫ことグランディナ様がこちらに来る。どうやら報告が行ったらしい。
「もう動けるの?」
「歩く程度なら」
「傀儡術は繊細なのね」
「さすがに頭やら腹やら癒した後では」
 簡単に見えるだろうが、本人は必死でやっていたのだ。指も動かないから誤解を受けるなど、かなり損をしていると思う。
「それもそうね。目が回るの? 動けるならついてきなさい。薬を作ったの」
 姫様が私の手を取ってくださる。お姫様に心配され、手まで取っていただけるのは嬉しいが……
「ちょ、新薬の実験台は勘弁して下さい」
「ホーン達にも飲ませたけど経過は良好よ。美味しいって」
 人の兄に何を騙して飲ませているんだ。ジュースとか言って飲ませていそうだ。出される物には今後は気をつけよう。
「グラ、まて」
 王子様の声だ。姫様は足を止め、思い切り見下げた感じの目を向ける。
 二人は似ているが、何か違和感があると思ったら、目だ。王子様の方は目の色が濃いため、金色には見えない。
「挨拶もなしか」
「声などかけては不吉が付きまとうのでしょう」
 男女の双子というのは不吉なものだ。男女の双子は、女が男の出世を阻むとか、殺すとか言われている。迷信深い家だと、今でも片方──ほとんどの場合は女の方を養子に出す。最悪の場合は片方を殺す。
 金の目で双子の妹など、男の方にとってはこの上なく悪いモノである。仲良く育つ方が奇跡的だ。とくに王族では何かと陰口も囁かれただろう。最も近しいはずなのに、近くあればあるほど双方にとって不幸になる。
「お前がなぜそれを回収に来た」
「近くを通ったからよ」
「なぜ騎士などと親しげに?」
 彼女が楽しげにしているとが気にくわないのだろう。彼女は彼にとっては汚点だと吹き込まれていてもおかしくない。
「賢く趣味の合う人間とは楽しく語り合えるわ。そうでしょう」
 姫様が楽しげに語り合う相手など私も今のところ他に見たことがないから、身内からしてもかなり珍しいだろう。それが彼を不機嫌にさせていそうだ。
「新人いびりに精を出すお兄様とは、趣味が合わないから楽しげな会話になりませんけれど。
 サディストコンビが帰ってくるとなぜか私に苦情が来るのよ。けが人を出さないでちょうだい」
 コンビという言葉で、王子の背後に人がいるのに気づいた。こっちは金髪だ。少し鋭い目つきだが、長身のハンサムである。
 ミーハーな女官達が小躍りしそうな超美形コンビである。見た目だけなら、彼らに夢中になる女性の気持ちもなんとなく理解できる。
 だが妹に言われるほどサディストなのだ。気をつけよう。
「ルーは身体が弱いから、ギルの嗜虐心を満たすには向かないわ。どうぞ他の方を当たって」
 姫様に手を引かれた。足の動きが悪いのでゆっくりと。
 あ、なんか睨まれてる。背中に突き刺さる。まさかサディストに目を付けられることになろうとは。
「姫様、結界を常に張っている人間に、相手が手を出して怪我をさせてしまった場合、結界を張っている者は罪になりましょうか?」
「大丈夫よ。お兄様は魔法騎士だもの。自分から結界につっこんでいくなんて他人に知られたら笑いものになる事はしないわ」
 なるほど。
 サドがそんな技能を持っているのは恐ろしいが、さすがは姫様の兄と言える。
「でも、兄は強いから気をつけて」
「気をつけます」
「一緒にいた馬鹿も他人をネチネチ虐めるから気をつけて」
「都会は怖いところですね」
「あの二人が特殊なのよ。もうあそこまでのけが人は出ないと思うけど、さっさと地方に行って欲しいものね」
 地方に行くということは、前線でバリバリと働くタイプなのだろう。私の住んでいた地方にはほとんどいなかった。昔はいた。でも、いなくなったタイプの騎士。
 私の主にとっては、何に変えても守らなければならなかった存在を、人間ではなく魔物に奪われて、あの地方は守られなくなった。
 それは私を雇った主が落ちぶれた原因で、私の足が悪くなった原因でもある。
 そのことを知ったとき、主はすまないと謝罪してくれた。
 一人の孤児に謝罪できるような人であったことも、快く引き受けた理由の一つだ。見下されていても引き受けただろうが、やる気は出なかっただろう。

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2008/01/18   詐騎士   26コメント 0     [編集]

1

「ルー、けが人だ! 東に走れ!」
 騎士らしさを磨くために奮闘していた私に、めずらしくいる騎士団長が怒鳴りつけた。怒鳴らなくてもいいだろうに。しかも私は医者ではないのになぜ派遣されねばならないのだ。
「なぜ私に?」
「下手に動かせないから、運びながら応急手当をして欲しいそうだ」
「一体何をしたらそんな状態になるって言うんですか。医者はどうしたんです?」
「いいから行けっ!」
 仕方なく剣をゼクセンに預け、自身を空に浮かす。飛ぶのは疲れるから嫌いだけど、緊急ならやらないとあとで飛べると知られた時に責められそうだ。
 私にはまだ用途不明の様々な建物の屋根を蹴って飛び越えて、おおよその方向しか分からない目的の場所を目指す。
 っていうか、なんでこんなに高い建物が多いんだろう。飛び越えるのに苦労するじゃないか。中で働くヒトも大変だろうに。しかも広いし。
 愚痴りながら高く飛んで見回し、それっぽい場所を発見した。
「どいてくださぁい」
 人が群がる上で彼らがどいてくれるのを待ち、件の怪我人を目視して顔をしかめた。
 頭からだくだくと血が流れている。口から泡を吐き、様子が明らかにおかしい。
 これはなかなか動かす勇気はないだろうし、魔法医が来るのが正解だ。魔法医は体力ないし、ここは一番離れたところにある練兵場だ。走って一番早そうなのが私だったから呼ばれたのだろう。訓練場同士は、どうやっているかは知らないが、いつでも連絡を取り合えるよう出来ている。上には傀儡と治療術が得意だと報告してあるから、腰の重い魔術師よりも早く駆けつけてくれれば助かる程度のつもりで呼んだのだ。これは命に関わる。
「誰がこんな事を……手加減知らずだな」
 傷を確認する。艶のない髪に、荒れた肌。手もごつごつしているから、新しく入った平民騎士だろう。
 首には新兵身分を表す証がある。
「誰か、頭部を持って傷を私の手に向けて下さい」
「こうか?」
「はい」
 近くにいた知らない先輩が固定してくれる。初年度以外は相手がどれほどの地位なのか、漠然とした事しか分からない。出世をすると各騎士団の制服と紋章にラインが増えていくのだが、凄い人が出世しているとは限らないので難しい。
 まあ、私は相手に関係なく、けが人を動かせる程度にすればいいのだ。脳に障害が残らなければいいが、そうなっても私の責任ではない。
「…………よし」
 危険な部位を癒し、腹の中などを探りそこも癒し、他の傷を癒し、中に手を伸ばさなくても治療できると確信するまで続けた。
「よし。これで命に別状はありません。
 しかし頭だけではなく内臓も傷ついていましたが、訓練中にどうしてこのような事になるのですか。手加減抜きでやったとか、そういう問題ではない状態ですよ。
 もうこんな重体者の治療なんて神経削られることしませんからね」
 念を押しておかないと、また頼られてもしんどいから避けたい。こんな所には長居は無用。
 しかし立ち上がろうとして、上手くいかない。足から力が抜けてがくりと膝をつき、そのまま尻もちをついた。
 こういう作業の後は過敏になっていて、自分の身体の操作が効かなくなるときがある。本当にああいう作業はきっついのだ。私には向いていないのだ。ほんと病弱な人間に何をさせてくれるんだと文句を言いたい。
「そこの」
 どうしようか悩みながらうずくまっていると、たぶん私に声をかけられた。首を持ち上げ逆光に眼を細める。太陽から目をそらし、その人物を見る。
 すっごくよく見る。よく見ても、見たものは変わらない。
「姫様?」
 思わず呟くほど姫様に似た男が立っていた。もちろん傷なし。美人の姫様男版だから、もちろん色男。身内だろう。王子様だ。美形の王子様だ。金髪じゃないことだけが惜しいが、世の中には絵本の中の住人がいるもんだ。どうしよう。ここはときめき、胸をきゅんきゅんさせるべきだろうか。
「魔術師がなぜ鎧を身につけている」
「先月騎士の称号を賜りました、ルーフェス・オブゼークと申します」
 昔は騎士とは王から頂く称号だったらしいが、今ではただの軍人でしかない。誰がなってもおかしくない。
「立て」
「申し訳ありませんが、先ほどの術の影響でしばし動けません」
 彼はむっとしたようで、力任せに立てようとする。軽いので簡単に持ち上げられるが、杖もないのでバランスを崩して少しだけ話したことのある偉い先輩に支えられた。
「殿下、この者は足を悪くしています。回復するまでしばしお待ち下さい。
 大丈夫か? 日陰に移動しようか」
 肩を借り、木陰に連れられ、そこで人目を気にしながら先輩は言った。
「あの方が犯人だ。ちょっと乱暴な方だから気をつけろ」
「まじっすか」
 他人を傷つけるなら自分に傷を付けるタイプの姫様とは、また真逆の性格の男である。


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2008/01/17   詐騎士   25コメント 0     [編集]

4

 私はホーンとゼクセンを会わせるために研究施設に度々来るようになり、姫様ともそれなりに親しくなった。
 姫様は見た目も趣味も不気味だが、話してみるとめちゃくちゃ頭がよくて勉強熱心で真面目だった。
 彼女にとっての私も年下でこれだけ話が通じるのは珍しいらしく、細かくて厄介なパーツの取り付けの補助をしながら色々と話しをした。ゼクセンはホーンに授業を受けているから二人きりである。
 私は年齢を偽っているから、年の差は彼女が思っているよりもあるはずだが、まあそれは関係ない。
「騎士どもの中にいるのはもったいないわね。本当にこちらに来ればよいのに」
「申し訳ありませんが、騎士になるのは幼い頃からの夢なので」
 お姫様になりたかったなどとはまさか言えない。彼女を見ていると、お姫様でも条件によっては大変なのだと思うし、彼女のような苦労をしなかったら政略結婚をしなければならないし、まあ騎士でいいかとも思う。どうせ不可能な自分の夢である。
 でも私が言った言葉は半分嘘ではない。騎士になりたかったのは、ルーフェス様だ。私はルーフェス様でもあるから、完全な嘘ではない。この大胆な話が進んだのは、そんな息子の願いを叶える意味もあったのだろう。私は見える物を共有し、この世界を見せられる。色々と道具を身につける必要もあるし、魔力を大量に消費するのであまり長くは出来ないが、彼にとっては唯一の楽しみらしい。
 そして擬似的な恋をするには、はなから手の届かない姫君はちょうどよい相手とも言えた。
 ルーフェス様は、私の憧れたような姫君とは違うが、賢くて美しい姫様が大のお気に入りである。
「理解できないわ。なぜ騎士などに」
「あまり長く生きられないと言われている身体ですので、やりたいことをやるんです」
「…………生きられない?」
「身体は魔力で動かせても、病状を止めることは出来ませんからね」
 三年も生き延びたら奇跡。そう言われているのを私も彼も知っている。私が騎士をするのもせいぜい二年。
 だから私は彼が生きている間に、彼として名を残す。それで彼が満足できるか知らないが、それが私の仕事だ。周知しておけば、突然病状が悪化して実家に帰るときもそれほど疑われないだろう。姫様にとっては、目の前にいる人間が数年後には死んでいると言われてかなり嫌な気分だろう。それに関しては悪いと思っている。しかしルーフェス様と子供達のためだ。やり遂げなければならない。
「ここにはいい医者がいるわ」
「色々と呼びましたが、どうしようもないそうです。だから親は好きにしていいと」
「そう」
 姫様はそう言うと、先ほどと変わらぬ作業に戻る。ペースも変わらない。さすがは姫様だ。
「好きなことをしているの?」
「ええ。姫様は?」
「この目と傷のおかげで、好きなことをしているわね」
「だから治さないんですか、それ」
 外傷というのは、完全に綺麗にするのは難しかったとしても、お金をかければここまで汚く残っているはずがない。今からでも十分に目立たなくさせられるはずだ。
「そうよ。どうせ完全には治らないし、道具としても使われない」
 道具とは嫁ぐという事だろうか。お姫様は大変だ。私なんて女としては何の価値もないから、頑張ってそんな事をする必要もないのだ。
「しかし、どうしてそんな奇妙な火傷になったんですか。火の中に手を突っ込んだようにしか見えないのですが」
「本を燃やされて手を入れたの。顔は髪が燃えて。本は結局半分以上ダメになって悲しかったわ。
 でも、偶然ホーンの実家に同じ物があったから、写しをもらったのよ。ありがたいわ」
 ホーンが出世してここに出入りするようになったのは一年ほど前らしい。
「…………そういえばあの頃、頼まれて写した記憶が」
「あれ、傀儡術で書いた字なの。達筆なのね」
「手で書くよりも上手いですよ。手で書くよりも早いですし」
「そう。便利ね」
 そう言って姫様は続ける。手でこれだけ気の遠くなるようなことが出来るのだから、この人もよほど好きなのだろう。
 毎日では身が持たないが、たまにこんな余暇を過ごすのもいい。
 ルーフェス様は喜んでいるから、変な噂が立たない程度に、時々視界を共有して、彼にだけは楽しんでもらおう。ルーフェス様が喜んでくださると、私も嬉しい。


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2008/01/15   詐騎士   24コメント 1     [編集]

3

 魔術師達の共用研究室に入ると、気付いたホーンが手をあげた。
 ある程度成果を上げると個人の研究室をもらえるのだが、機材も材料も資料も専門外の事を尋ねる相手もいるここで研究を進める者の方が多いらしい。個室を使うのは成果が盗まれるような実験をする場合か、書類を書く時だという。普通、他人のしていることを後ろからじっと見ていても、半分程度しか理解できないので大した問題はないのだ。
 と、ホーンが言っていた。
「ああ、その子が傀儡術の天才って子か」
 おそらく天才と呼べる程度には精通しているだろう。これがないと不便で仕方がないから覚え、常に使っているため上達しただけだが。
 人間、必要になれば上手くなる。
「ねぇねぇ、この人形動かしてみてよ」
 眼鏡をかけた女性が、実寸大の人型模型を指さして言う。言われるがままに動かして一人でワルツを踊らせる。よほどストレスが溜まっているのか、無精髭のおっさんがうおぉぉっと立ち上がり、狭い通路で人体模型と踊り出す。
「おもしろぉい」
 ゼクセンがパチパチと手を叩く。
「なんだ、もう彼女作ったのか。ホーンの弟分のくせに手が早い。っていうか見たことないな。どこで働いているんだ?」
 ホーンの同僚が勘違いをして私服姿のゼクセンに絡む。それを見て、鎧を着込んでいる姿を知るホーンは笑った。
「いやこれは間違いなく男の子だよ。脱がせようか」
 同じ釜の飯を食って学んで寝た仲なだけあり、私とホーンの思考回路は似ているらしい。隣にこれがいなかったら、線の細さやら顔つきやらで女のようと言われそうな私を心配して、積極的に男であることを見せようとする。
 実に効果的な方法である。
「何馬鹿なことをしているの」
 奥の部屋から声がしたと思うと、何と、あの不気味姫が出てきた。相変わらず不気味である。だが美人でスタイルが良いのでうらやましい。私には、大人になっても絶対に手に入れられそうにもない物を彼女は持っている。
「動きたいのなら庭でも走るといいわ。おしゃべりをしたいなら自分の部屋でなさい」
 ぎろりと睨み付けるその迫力と来たら、金色の目もあってぞくぞくする。まだ若いのにこれほどの威を身につけるなど、さぞ苦労して育ったのだろう。
「ところで」
 姫君は私を見た。
「精度はどの程度」
 ものすごく唐突に尋ねられた。
 精度とは、傀儡術のことだろう。何を求めているのか知らないが、分かりやすい例えを考える。
「針の穴に糸を通したりと、そういう方向での精度でよろしいでしょうか」
「では来なさい。馬鹿が騒ぐから、模型のパーツを落としたの」
 許可が出たので奥へ入ると、大きな机の上に、設計図と模型だけが置かれていた。模型と呼ぶが、立派な魔具だ。魔法陣の一種で、緻密に計算されて作られたパーツを、呪力を込めながら組み立てていく。これは針金のようなものを溶接しながら組み立てている。私は前に木造りの物を組み立てたのだが、もう二度とやらないと心に誓った。しかもこれ、覗き込むと向こう側がほとんど見えないほど細かい。私が作った物の比ではないほど細かい。頭が痛くなりそうだ。
「下手に弄ると壊れそうだから取れるなら有り難いわ」
「ど、どこに?」
「そこ」
 姫君は焼けただれた指でそこそこと示すが、細かすぎてなかなか見つけられない。
 悩みに悩んで、全体を少し持ち上げるように力を入れると、わずかな動く感覚でようやく見つけた。完全に出来上がっていないこれは保護もされていないので、素材が脆く崩れやすい。冷や汗をかきながら引きずり出し、姫君の手に乗せた。
「極めると便利そうね。諜報部に一人いるらしいけど、大したことは出来ないはずだわ。何かコツがあるの?」
「常に使うことですよ。食事も着替えも手を使わずに行うと慣れてきます。字を書く時に便利ですよ。腱鞘炎知らずです」
 ここまで来ると怠けたい一心で上達したようにも取れる。悪いのは幼い頃に痛めた足だけだから、ここまでする必要はなかったのだ。なんか、脅迫概念に囚われて必死で長所を伸ばしていたような気がする。まあ、おかげで生きていくのに困りそうもないからいいけど。
「そういえば、あなた、名は」
「ルーフェス・オブゼークです」
「ルーフェス……ルーフェス」
 ぶつぶつと何度も口にする。呪われているようで居心地が悪い。
「グランティナ様、珍しく他人に興味を持たれたのですね」
 ドアのところでこちらを見ていたホーンが言う。
「ルー?」
 グランティナ姫はフルネームではなく、ホーンが口にした私の元からの愛称を口にした。まさかルゼと呼ぶわけにもいかないから、ちびっ子達が呼ぶように私を呼ぶ。
 そういえばゼクセンも誰かが口にしたそれを聞いて、今の甘ったるい呼び方になったのだ。
「ルーね。騎士団なんかやめてこちらに来ればいいのに」
「私は荒事向きなので」
「そう、残念だわ」
 残念だけど、私には仕事があるし。仕事がなければすごく有り難い申し出だから、ちょっと惜しい気もする。


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2008/01/14   詐騎士   23コメント 0     [編集]

2

 この身代わり生活にも慣れてきて、無事組み分けもゼクセンと一緒になり安堵で気が抜けていた時、知り合いと再会してしまった。
 魔術師で、こちらの事情を知る相手なので問題ない。私の兄弟子に当たる人だ。国に仕えていたのは知っていたが、研究所とか、そう言うところにいるのだと思い込んでいた。
 どうやって再会かというと、彼は私が配属された白鎧の騎士団付きの魔術師だったのだ。付きといっても、普段は顔を合わせることもないし、よほどのことがない限りは実戦に参加したりはしないが、有事には補助をしてくれるらしい。つまりは戦争で、大きな魔法を後ろの方からぶっ放してくれるだけの人、作戦にちょっと知恵を貸してくれる人、程度の関係だ。
「兄弟弟子って、ホーン、お前は孤児で、誰の養子にもなっていないだろう? どうしてそんな」
 一通りの紹介が終わり、ざっと説明を受け、小休憩になると話しかけられ、その会話を聞いていたアスラルは無遠慮に問うた。アスラルは親しくなったからと、強引に私たちを自分の所に引っ張ってきたらしい。下心見え見えだったから驚きはしない。
「私たちの母……院長が彼に手ほどきをしたんですよ。院長は自分の力をすべて子供達のために使う素晴らしい方です。まあ、つまり子供達のために、院長がアルバイトしていたって事ですよ」
 それは本当だ。おばあちゃんはルーフェス様に魔術を教えていた。ただし、治療のためである。ルーフェス様よりはゼクセンの方がよほど魔力が多いので、本当に気休め程度だった。そしてそのアルバイトの延長を私がしていることになる。
「動けるようになってよかったね」
「はい」
 ホーンはおばあちゃんの教え子の中でも優秀だ。見栄えもいいし、品もあるし、一番の出世頭である。
 彼からの支援はとても大きく、そんなに寄付して大丈夫なのか心配だった。本人は身綺麗にできて食べることさえ出来ればそれでいいと言うが、恋人の一人も出来たらお金もかかるだろう。だからずっと皆で心配している。
 ゼクセンの親と、将来はゼクセン自身が寄付金の継続を約束してくれたから、彼の負担も減るといいのだが、それでも寄付はやめないのだろう。私もたぶん同じだから、気持ちはよく分かる。
「でも、騎士になるからと髪を切る必要はなかったんだよ。魔術師でもあるんだから」
 短くなった髪に触れ、性別を知る彼は痛ましげな顔をする。
「別に変わらないし」
「ルーがそれでいいって言うならいいけどね」
 頭を撫でられ、年に一度しか会えないその人の顔を見つめ、安堵する。
 彼はかなり位が高い。部屋には、シャワーぐらいあるかもしれない。さすがに、たまには服を脱いで身体を洗いたくなる。何かと理由をつけて通ってみよう。
「そうだ。ルー、訓練もいいがこっちにもおいで。君は騎士でも、魔術師だ。その力を期待されるだろう。身体ばかり動かしていては、頭が堅くなってしまうよ」
「有り難い。ホーン兄は教えるのが上手いからな、是非これに教えてやって欲しい」
 私は子供特有の曇り無き純粋無垢な笑みを兄に向ける。背が高いのでかわいげがないが、私はまだまだ子供である。天真爛漫なのだ。
「いや、その、僕は……」
 ホーンはゼクセンのきらっきらした瞳を見て押し黙る。彼は子供に弱い。もうそれなりの年齢だが、こうも子供っぽいこの少年に、こんな純粋な憧れの目を向けられたら──
「よ、よければ、君も一緒においで」
 この男にあらがえるはずがない。
 分かっていたことだ。
「るーちゃんのお兄さんなら、僕にとってもお兄さんだよね。これからよろしくお願いします」
 兄呼ばわり。
 ホーンはうぐっと唸り、それはもう可愛らしい純粋な少年の目に、負けた。
 完敗だ。
 勝てるはずがない。
「お前等、休憩中だから和むのはいいが、脱力するような和み方をするな」
 式典のような物は先ほどやった。この後祝宴が開かれるらしいから、おそらく今日は顔合わせだけだろう。
 女性も来ない内々の祝賀会だから、粗暴なものになりそうだ。
「ホーン兄も祝賀会には出るの?」
「君が望むなら」
「絡まれたくない」
「では強面数人を引き連れていこうか」
 ちらとホーンはゼクセンを見る。女性がいないと、どうしても華やかな容姿の少年がからかいの的になる。からかいですめばいいが、人は酒が入るとどうなるか分からないものである。
 他の先輩方も、それがいいそれがいいと、一様に頷いた。


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2008/01/13   詐騎士   22コメント 0     [編集]

1

 今日も訓練(?)にいそしんでいた。
 そんなおかげで私も剣が様になってきた。力はいらないから型の問題なのだが、一定の姿勢をとるのは骨が折れる。物もふわふわ浮かせるのは楽でも、一カ所に固定させるのはとても難しい。こればかりは維持していると身体が痛くなる。
 そんなささやかな苦労と達成感を覚えながら、あと数日で様子見期間が終わり組み分けなどと心の中で呼んでいる、隊分けが行われる。
 何騎士団に所属するかで、未来は大きく変わる。
 私は互いを補助し合えるゼクセンが一緒でないなら長く保たないと断言しているので問題ないだろう。
 今一緒にいる連中とも別れて、西側と東側で訓練している連中と混じることになる。始めに見た内の何人かはもう脱落していることだろうから、多少減っていそうだ。
 それである程度慣れてきたら地方に派遣される。
 そうなれば私も気が楽になる。こっそり抜け出しやすくなるし、女装すれば大手を振って風呂にも入れる。切った自分の髪をカツラにしてもらったから、もしもの時に使える。
 そんな事を考えていると、周囲がざわついた。
「姫だ」
 誰かが呟く。先輩の言葉だろう。新人達は王族など知らないものである。
 しかし私も女だ。お姫様というのには少なからず憧れを抱いている。
 内心うきうきしながら振り返ろうとして、周囲の声が耳に届く。
「不気味姫がなんで……」
「日の光の下に出ても平気なのか」
 どんな姫君だそれはと思いながら振り返る。
 確かに、不気味だ。長い長い癖のある黒髪に、暗がりの中にあっても、黒すぎて逆にはっきり見えそうな黒いローブ。特徴的な、魔物を思わせる色合いをした金の瞳。金の瞳は凶兆と言われ、生まれたときに殺されていた時代もある、そんな不吉の瞳。実際に魔力が強く、悪い物まで引き寄せるためそんな風に言われている。他には魔族の混血も金目が多いのだが、あの姫君は肌が真っ白いのでまず人間だ。魔族の肌は地下に住んでいるのになぜか浅黒い。
 金の目だけでもかなりの特徴なのだが、それを上回るインパクトが彼女にはあった。顔にある引きつった火傷の跡だ。女の子なのに、顔に火傷があって、隠そうともしていない。
 彼女はかなり綺麗な顔立ちをしているのに、身体的特徴と外傷によって台無しにされている、まさに不気味姫。憧れる姫君とはちょっと違う。かなり違う。私が思い描く姫君は、白かピンクのドレスを着た、優しそうだが馬鹿っぽい美女である。それが彼女は暗くて不気味で、知性を感じるのだ。本当に予想外。
 それがなぜだか迷うことなく私の方に向かっていた。
 何かしただろうか。まったく身に覚えがない。
「お前が魔術師」
 物見遊山かこの姫様。
「はい。ルーフェス・オブゼークと申します」
 ぎこちなく騎士の礼をする。平民で女だから、こんな礼をするのは一生ないはずだったので、どうしても優美さに欠ける。
「よい」
 ひどい火傷の古傷がある右手で払う仕草をした。顔にあるのも右側の頬。何があったらこんな火傷をするのだろうか。
「身体を魔力で動かしていると」
「左様でございます」
「どれほど頼っているの」
「杖がなくては歩けないので、普通に歩く分から」
 お前何のために走ってるんだと言われ、リハビリ気分と答えたら親指地面に向けたり、中指を立てられたりした。
「専門は」
「傀儡術です。他は補助と治癒を」
 悪い方に使えば立派な攻撃にもなる術だ。傀儡術はマスタークラスが他にいるとは聞いた事がないので、少なくともこの国にはいない。かなり珍しいタイプの術者である。
「そう。傀儡術だけでもないのね」
 それだけ言うと、彼女はきびすを返して去っていく。
 後で聞いたのだが、彼女も魔術師らしい。王族の姫君で魔術師とはかなりの珍事ではなかろうか。
 実に不気味で不思議な姫様であった。でも姫君には違いないから、顔を合わす機会があったら、ルーフェス様を起こして見せてやろう。きっと喜ぶ。その前にビックリするだろうけど。


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2008/01/12   詐騎士   21コメント 0     [編集]

6

 私は服を着たままシャワー室に入る。
 脱げるはずがないので服を着たまま延々と水を浴び続け、出るときには一瞬で乾かしてしまうから、変な奴以上の目で見られていない。幸いにも私は服が濡れても目立つような物は持っていないのだ。
 水を浴びるのは汗を流すよりも、水を浴びる事が目当てである。
 水を魔力に換えるのは天族が得意とすることだ。天族とは翼が生えた、世界で一番魔力の高い生物である。馬鹿ではないが他の種族に混じることなく、独特の文化を持ち原始的な暮らしをする種族だ。
 私はそれを見習い、あれほどではないが水の魔素を魔力とする術を会得した。
 たぶん水以外でも出来るが、土など硬いし火など暑いし風などとらえられないし、肉だと人肉が一番手っ取り早くなり、やはり水が一番である。
「ふぃ……」
 気が済むと脱衣所に向かいながら身体の水分を蒸発させる。
 見物人が出来ているが気にしない。
「るーちゃん、おわった? 僕もう髪もほとんど乾いちゃった」
「クシぐらい通せ。はねている」
 持っていたクシで髪をとき、ついでに生乾きの髪からほどよく水分を抜いてやる。専門職ではないので彼の侍女達がしていたよりも不格好だが、そのまま乾かすよりはよい。
 一週間もこれを続けると、こいつら出来ているんではなどと噂されるが、この可愛いおぼっちゃんはそんな悪趣味ではない。変な噂など放置すればいい。親しくなった連中には将来義理の兄弟になる予定だと説明しているので、仲がよいのも納得してくれる。可愛い可愛い妹の綺麗な綺麗な婚約者。それを綺麗に綺麗に保つ馬鹿な兄と見られればよい。
 同性愛者よりはいいだろう、たぶん。
 ルーフェス様もこの雰囲気は知っているが、何も言わないのだから文句はないのだ。
 自分の事ではないので変な噂など流れないに越したことはないが、どうしようもない部分はある。私は偽物なのだ。名さえ残せばいい。あとこのお坊ちゃまの護衛。使い物になるまでか、実家に帰るまでかは分からない。私がここにいるのは、近い将来訪れるルーフェス様の病死までなのだから。
 その頃になったら『私の病気は悪化して、実家に帰る』ことになる。そして任を解かれる。その後は、領主様が何とかしてくれるだろう。彼らはとてもいい人で、私に対して罪悪感を持っている。手厚くしてくれるだろう。
 それらはすべて、ルーフェス様が死んだ後か、それに近い状態の話。
 その長くはない期限内で、死ぬと分かっている少年にしてやれることはおそらく少ない。たまに視界を貸して、唯一の親友であるゼクセンの保護と教育。それぐらいしかしてやれない。
 ルーフェス様の事は昔から好きだった。私の事など記憶どころか、存在すら意識していなかっただろうが、私はけっこう好きだった。もちろん敬愛という意味の好意である。
 そんな相手が今、隣にいるゼクセン以上に近い存在となっている。私と彼が共有する記憶は、私にとってはとても大切な物だ。今も、昔も。
 そんな存在が、死ぬのだと分かっている。
 私のように冷めた子供にとっても、気の重い話だ。しかし仕方のない事。人は簡単に死ぬものだ。自分が今まで死ななかったのは、運がよかっただけである。
「そーだるーちゃん。ご飯食べたら図書室に行こうね」
 ゼクセンはこの一週間で意外と慣れたらしく、食事も取って就寝までの余暇も楽しめる程度にはなった。
 もちろん筋肉痛にならないように、私が治療している結果だ。そうでなければ他の連中のように、そろそろ疲れがピークに達しているはずである。
 だから「お前らずるい」と言われるけど、私は気にしない。だってゼクセンの親にもお金もらっているから。
「るーちゃぁん、俺も俺も、図書館行くぅ」
 背後から首を絞められるように抱きつかれ、ぎょっとして頭を後ろに下げる。近距離からの頭突きを食らった同僚ははぐはぐ言いながら鼻を押さえる。
「治療してほしかったら金払え」
 甘えられても無駄である。私は金と自分が楽しむためでしか動かない利己的な女だ。
「ゼクセンはいいのかよぉ」
「全力で頑張ったご褒美だ。その後マッサージしてもらっているし、お互い様だからな」
 足が不自由なので、適度に動かしたりマッサージをするのだ。マッサージは自分でやるより誰かにやってもらう方がいい。
「お前ら、すんだらさっさと行け。後がつかえてるんだぞ」
「はい」
 先輩に言われて、私達は速やかにその場を離れた。
 シャワーもかなりの数だが、やはり取り合いだ。広い浴場も混んでいるが、下っ端が行っても気まずい思いをするだけらしい。出世している先輩に連れられて行かれるのでない限り、覚えが悪くなり出世にも響く。つまり、先輩に許可なく混じってんじゃねぇという、狭い心の表れである。
「私は着替えてくるから、ナジト、これを頼む」
「つか、なんで着替え持ってこないんだよ」
 いつか誰かにつっこまれると思っていたことを、一週間目にしてようやく言われた。変人と納得しようにも、やはり気になるようだ。
「私は病弱で、ベッドがホームという生活が幼い頃から続いた」
「らしいなぁ」
「魔力を使い動けるようになったが、魔力がなければ一人では歩けない身体だ」
「そうなのか?」
「とても人には見せられない身体だ。見たくもないだろう。だから着替えは部屋でしている」
 本人も床ずれがひどいらしいから、嘘ではない。この言い訳はルーフェス様が考えたことだ。女の子にもしもの事があるよりは、始めから納得させた方が良いだろうと。彼にとっても私にとっても自虐的だが、採用させてもらった。
「るーちゃんは、とっても頑張り屋だから一人で何でも出来るけど、とっても病弱でか弱いんだから、からかったり虐めちゃダメだよ」
 ゼクセンが涙ぐましい事を言う。
「私はお前が虐められることの方が怖いのだけど。しゃれにならない気がして」
 周囲も納得してくれたようで、あぁ、と頷いている。気づかないのは私のナイト気取りの当事者だけ。
 いつか本物の騎士になってくれることをただただ願う。
 他人事ながら心配でならない。彼は綺麗な身体で帰してやりたいのだ。

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2008/01/11   詐騎士   20コメント 0     [編集]

5
 
 午後からは体力診断テストのような事をした。
 もちろんそんな説明は受けていないが、そういった基礎能力が分かるような事ばかりをさせられる。
 最後にはマラソンだ。
 先頭を行く細身の騎士について行けるだけついて行くというもので、必ずしもあとをぴったりとついて行く必要はない。
 持久力の順位を見るには一番いい方法だ。多少足が遅くとも、最後まで走っていれば脱落者よりはよい評価を得るだろう。
 私としてもこの護衛対象者であるゼクセンがどれほどの体力の持ち主か知るにはちょうどよかった。意外にも他の連中よりはマシだったのが判明したのだ。
 基礎体力はあるらしい。力はないが俊敏性は高い。これならそれなりに守りやすい。暴走しなければ。
 現在も息も絶え絶えにだがちゃんと走っている。
「押そうか?」
「いいっ!」
 私の持久力は体力ではなく魔力からきている。おばあちゃんも呆れるほど魔力があるらしい。元々あった才能は、幼い頃に刺激され続けて開花したのだろうと言われている。
「鎧、重いでしょう」
「いいっ」
「水は飲んだ方がいい」
 差し出したそれをゼクセンは一口飲んで返してくる。
 意外とがんばり屋さんだ。多少遅れているが、それでも前を走っていた者達が脱落したことによって順位は上がっている。鎧と剣は意外に重い。そのうち荷物も持って行うだろう。今から脱落していては先が思いやられる。
「るーちゃ、さきっ、いっ」
 息も絶え絶えに言うが、
「私の評価はこんなことではないから問題ない」
 インチキに近いのだ。かといってこれをやらないと私はろくに動けない。昔足を痛めてから、ずっと杖をついて歩くような足なのだ。だから私は必死になってこの技術を高めた。
 日が暮れた頃になってようやく先頭が足を止め、一周遅れになりながらも足を止めなかったゼクセンは、終わるとばたりと倒れた。
 つついてみるが息も絶え絶えである。これは夕飯などろくに食べられないだろう。
 先頭を走っていた騎士もさすがに息が荒く、監視していた──というか、新人を評価していた先輩方も、倒れている後輩達の息が整うのを見守っている。
 一番息が整っているのは私だ。
 ぼちぼち立ち上がる連中が現れると、平然としていた私の元へとやってくる。
「るーちゃ、おま、化け物かっ」
 私は本名として通らなければならない名よりも、るーちゃんの方が知られているようだ。
 考えなくてもそうなるのは当たり前だなのだ。一番よく名を呼ぶゼクセンがるーちゃんと大きな声で呼んでいるのだ。耳に届いたら印象に残る。私は彼らにとって「るーちゃん」なのだ。
「魔術というのは身体を強化することで一番力を発揮する。つまり、力よりも力なのが魔力」
「ずりぃ」
「体力の代わりに魔力を消費した。嫌になるほど水を飲まなくてはならない」
「水で回復!? そんなのありか!?」
「魔力の足りないない人間がやったら逆に疲れるから、持久力に換算してもいいはずだ。
 あと、走るときには普通に水を飲んだ方がいいぞ。自分をいじめ抜くやり方は流行らない」
 その頃にはゼクセンも起き上がり、ふらふらと歩いて再び脱力する。
「るーちゃん、僕、いつかるーちゃんみたいに、タフになる、よっ」
「いや、魔力なしでこうだったら化け物だから無理だって」
 思いこみが激しいおぼっちゃまは、それでも根性のある方に激しい分、疲れたくないと早々に足を止めた連中よりはずっと男らしい。
 ばあちゃんの言うところ、いい男という奴だ。

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2008/01/10   詐騎士   19コメント 0     [編集]

4

 剣、というものを持ったのは実に久しぶりだ。自分には合わない。ナイフか、いっそ槍の方がいい。むしろ刃物はいらない。棒だけでいい。私は棒と投げナイフと釘だけ持って毎日森の中を歩いていた。
 腕を見たいから、適当な相手と組んで動けと言われたが、ゼクセンを他の誰かに任せるのは不安だし、自分はこうだ。
 少しばかり悩む。
「るーちゃん、剣は不得意だよね。僕が教えるよ」
「遠慮する」
「どうして!?」
「剣と思わなければいい。ただのちょっと尖った鉄の塊と思い、相応の扱いをすればいい」
「雄々しいのもいいけど、見た目も大切だよるーちゃん! でもるーちゃんにはそれ重いかもね。レイピアみたいなのが似合うよ!」
 病弱で通す予定の私にはその方がいいだろう。しかし今はこれを使うのが決まりだ。駄々をこねても仕方がない。
 平民出で試験を通り騎士になった者ならともかく、貴族というだけで騎士になった連中は、形ばかりの綺麗な剣しか扱えまい。見栄えはよくても、弱いのでは意味がない。私はその綺麗な形を作るのに時間をかけるのが馬鹿らしいと感じる。面倒なことをしたくないタイプの人間なのだ。
「るーちゃんは剣を使えないのか。そりゃそうだよな。魔術師なんて、後方支援してればいいもんなぁ」
 誰か知らないが人の会話を聞きつけて絡んでくる。
 確かに私は支援する方が得意だ。
「剣が苦手なだけで、前線に立っても十人分の仕事は出来るが」
 最前線に置かれても困るが、やれないことはない。やれるからこその人選である。こなせないのなら始めから男が来ている。女を寄越すなどと無謀なことはしない。
「こらこら、初日から何を仲間割れしているんだ」
 どうやら私たちに気をかけてるらしいアスラル様がこちらに向かってくる。からかってきた男とその一味はやべっと言って去っていく。
 徒党を組むなど子供のようだ。おそらく貴族連中だろう。庶民出の方がよほど上品で紳士的というのはどういうことだ。彼らも騎士の試験を通るまでは、地方で徴兵されただけの、ただの兵士に過ぎなかったというのに、そんな市民階級に騎士らしさで負ける貴族……。
 昔は貴族も従騎士として一から始めたらしいが、今では誰かの世話をする、させる、など冗談ではないと、子だけではなく親からも苦情が来てこうなったらしい。嘆かわしい。
 騎士なのに魔物退治が主な仕事のせいで、馬を使う機会が少ないので、乗馬の下手な騎士も多いしそれで大して困らない。嘆かわしいんだが、私も乗馬は苦手なので助かる。なんか、よっぽどいい馬じゃないと脅えられるんだ。
 先ほどのお坊ちゃまみたいなのは、弱そうな相手を見つけると虐めたくなるのだろう。魔術が使えても、身体は弱いのだ。イジメやすそうと思ったに違いない。魔術師など魔術を使われる前にどうにかすればよいと。
「まったく、騎士なんぞになる魔術師がどれだけ貴重か分かってない馬鹿どもには困ったものだな」
 アスラル様はため息をつく。もうひいき丸出しだ。
「剣が苦手ならもっと軽いものに変えればいい。あまり特別扱いはしたくないが、お前は特別だ。重い物を持たせて倒れられても困る」
「問題ありません。私は自分の腕力では持ちませんから」
 持っていた剣から手を放す。ふわふわと浮くそれを見て、アスラルは目を点にした。
 私は大魔法のようなものは苦手だ。そんなものは本当に安全な位置で控えている後方の魔術師がやればいい。
「傀儡術です。一人で攻城用兵器も扱えますよ」
「すごい魔術師だと聞いていたが……珍しい魔術だな」
「他者を操ったり、石など浮かせて周囲を血の海に変えるような術です。ナイフを山ほど持っていれば、殺傷能力はかなり高いですね。ある程度操作できる刃物の雨になりますから」
「頼もしい限りだ。
 やはり、好きなようにすればいい」
「では皆と変わらぬ扱いを」
「そうしよう。しかし辛かったら言うといい。寝込まれては私が上から睨まれる」
「そうさせていただきます」
 ここまで特別扱いだとは思っていなかった。
 やはり、まず剣の扱いを覚えたほうがよさそうだ。一人だけ特別扱いされてしまうと、ゼクセンと離されてしまう可能性がある。あまり騎士の剣を見たことがないから、とりあえず観察。市民出らしき二人が、お手本のような手合わせをしてくれているのでそれを見る。私は他人の真似は得意だ。
 しかし、お手本のような手合わせと言っても、強いか弱いかどうか、実はよく分からない。
 今までの私は、相手を殺せる、ねじ伏せられる、逃げおおせる、殺せない、殺される、それのみ考えていた。そんな事が大切で、相手の強さなど二の次だ。だってどれほど強くとも、弓も届かない上空にいれば殺されることはない。
 先ほども言ったとおり、刃物の雨でも降らせれば殺せる。
 相手の強さに関係なく、だ。
 しかしこれからは違う。
「るーちゃん、剣の構え方から教えるよ。それなら怪我をしないよ?」
「そうだな」
 その程度なら、これから習うのも問題ないだろう。


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2008/01/08   詐騎士   18コメント 0     [編集]

3

 私が着替える時、ゼクセンは背を向ける。
 絶対に見ないよと何度も主張してくれるので、薄い壁の向こうで誰かが聞いているのではないかと不安になり、黙らせるために殴るという、もう使用人としては失格な態度をとりつつ着替える。休みの日には仕切りのカーテンを買ってこようと決めた。
 その後は食堂で食べ、鎧を身につけ昨日の場所に集まる。昔と違って魔物相手が多い今、フルアーマーでないことだけは有り難い。
 新人は一ヶ月、いくつかに別れて訓練し、その結果で適切な場所に配置される。騎士団は三つあり、その下によく分からない細々とした組織がある。貴族連中は戦果を上げる気があれば最前線に行くらしいが、家に力のあるやる気のない連中は都で安全に過ごして女の子を口説いて故郷に帰っていくらしい。望まずに前線に行くのは不興を買っているか力のない家の者だ。
 私のご主人様のところは昔いろいろあって、そっち寄りだ。大きなミスをして、少し落ち目なのである。ゼクセンの家は金はあるが地位が低い。
 だから前線に行くのだろう。今は戦がないから、すべての人間にとって共通の敵である、土の下に住む魔物退治が主な仕事だ。地方での騎士とは、お国が派遣してくれる魔物を退治する人たちという認識だ。そのため真面目な騎士がいる場所では子供達がそれに憧れるのだそうだ。実際に試験に受かる程度の学力があるなら、給料も貰えて、仕留めた魔物によっては死骸が高く売れる上、装備品も住む場所も用意してもらえるという、なかなか魅力的な職業である。魔術のない者がフリーでやるよりも、騎士になった方がやりやすいだろう。女の子にももてるし、貴族とも親しくなる。貴族よりも前に立たされるが、それは元より覚悟の上だ。数人で鬱々と穴を捜している方がよほど危険なのだと、一度でもやったことがあれば分かるので、よほどの扱いを受けなければ文句は言わない。
 その金づるであり憎むべき魔物は、地面の下に大陸中を網羅する規模の巣を作っていて、穴を掘って地上に出てくる。人里が離れていれば狩りをするだけだが、運悪く人里に近ければ、地下では手に入りにくいものや、家畜や人間を略奪していく。
 私達はそいつらを退治したり、人里近い穴を崩してその付近に呪の込められた札をばらまくのだ。
 それに関しては元々やっていたことなので慣れている。問題ない。問題があるとすれば、パニックを起こした馬鹿が余計なことをする場合だ。もちろんそれも慣れているのでほとんどの場合は問題ない。私はそれに関しては騎士の連中よりよほど優れている自信がある。私達は仮にも貴族だし、半年は中央にいるだろうから感覚を忘れてしまう恐れもあるが、自分が先頭に立つわけでもないので問題ない。
 問題はゼクセンと離されてしまう可能性があること。私達はバラバラにされないためにも、離されないための言い訳をしなければならない。
 私の身体のことと、魔術の儀式的な補佐を理由にどうにか主張を通さなければならない。
 幸いにも、ゼクセンは少なくはない魔力を持っている。勉強をして、訓練すればそれなりの魔術師になるだろう。その才能を生かすために、出会ってから毎日一つの練習をしていた。
 術の増幅。
 本来私にはいらないが、素人相手にはこれで十分な言い訳になる。魔法騎士というのはそれほど珍しくないが、宮廷魔術師レベルの使い手になってくると珍しい。孤児として試験なんて受けに来たら諜報部に入れられそうだったからその気は無かったから、力をすべて見せずとも、隠すつもりもない。
 引く手数多だろう。だから多少の融通はきくはずだ。
 そのためにも、この一ヶ月はゼクセンと一緒に置いておいた方が実力を発揮すると思わせておくのがよい。あとゼクセンを心配しまくって、引き離すと情緒不安定になるぐらいの演技をするつもりだ。
 決意し、用意していた手立てを頭の中で再現する。
 そうしている内に、上官が目の前に立っていた。
 確かアスラルとかいう白鎧の騎士団の偉い人だ。年の頃は二十代後半。日に焼けた、逞しい体躯の男だ。訓練中は厳しいが、オフの時は気さくないい人らしい。
「おはようございます」
 隣で女のような笑みを浮かべてゼクセンが挨拶する。私はそれに倣う。私一人では頼りないと思っていただきたい。
 アスラルの視線はゼクセンに向けられているけど。
「やはり脱がせますか?」
「いや、疑っているわけではない」
「彼の姉はすでに嫁いでいますし、妹はまだ十歳ですが」
「いや、無心をするつもりなどは……」
 そういう男は昨日の今日でもう何人もいる。女が趣味の男はこれでどうにかなるが、男が趣味の男はどう対処するか、頭が痛い。
「お前が魔術師か」
「はい。ルーフェス・オブゼークと申します。こちらはゼクセン・ホライスト」
 アスラルはルーフェスをじとっと見つめた。顔に似合わない名をしていると思っているのだろう。でも本人はもっと儚げだぞ。
「脱がせるのでないとしたら、何のご用でしょうか」
「いや、昨日は悪いことをしたと思い」
「問題ありません。想定内です」
「それならばいいが……ルーフェスといったか、もう少し肩の力を抜くといい。友人が心配なのは分かるが」
「はっ。申し訳ありません」
 端から見れば、過保護にも見えるのだろうか。疑われる様子がないならそれでいい。
「気持ちも理解できるが……ここはケダモノの巣窟ではないからな」
「問題ありません。守りは十分です」
 対魔物用に作った護符をいくつも身につけさせているし、彼の身体を魔力含めて完璧に操作できる。後者が私にとっての切り札だ。だから誰にも言うつもりはない。普通はせいぜい身体を操り人形のように操るだけで、虚ろな目をしていたりしてばれやすい。でも私のは完璧に自分の身体のように操れる。
「私は君自身も心配だ。身体が弱いと聞いている」
「弱いからこその魔術です」
 私は魔力がなければ、きっと、もっと病弱だったと言われている。幼い頃、魔物にやられた怪我が原因で足が悪いから歩く事もろくにできない。
 だからすべてが嘘なのではない。
 嘘は偽者である事、女である事、病では死なない事、この三つだけで十分だ。


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2008/01/08   詐騎士   17コメント 0     [編集]

2

 私は孤児だ。
 もしも雇い主の領主様が悪い方なら、この仕事が終わった後、命の危険もあるから引き受けなどしなかった。しかし領主様は人を殺して平然としていられるような人物ではない。だから用無しになれば元の生活に戻してくれるはずだ。性別すら偽っているから、数年もすれば別人のようになるだろう。たぶん肉付きをよくする協力ぐらいしてくれるだろうし、立派に女らしくなれば男としてここにいるルーフェス様ではなくなる。
 私の雇い主の息子、ルーフェス様は余命が短い。
 だからこそ兵役を免れるために他人を寄越しても大した問題にはならないのだ。社交界には出られない──言ってしまえば、近い内に間違いなく死ぬのだ。そのうち治療法は確立されるかも知れないが、彼が死ぬまでには無理だろう。だったら跡取りの兄を守るためにも、ついでにこのお坊ちゃまを守るためにも、強いが病弱にも見える身代わりを立てる必要があった。
 前提として、身代わりは病弱に見え、かつ実力がなければならない。
 なにせ時期が来たらルーフェス様として『病で死ぬ』必要があるのだ。病で死んでも不思議ではないと思われ続けなければならない。
 私は生活および体質のせいで、女らしさとはほど遠い痩せた身体をしている。
 自分が腹一杯を食べるなら、もっと小さな子供達に食わせてやりたいから小食だ。だから頬は痩けているし、初経もまだで、しかし背だけは伸びていたため、十五歳の少年として入り込むことに成功した。少し育ってから捨てられていた孤児なので、自分の年齢は正確に知らないけど、最大に見て十三歳。下に見るなら、十二歳になったばかりという年頃だと思う。なのに十五で通るのだ。背が伸びていることがこんな所で役立つとは思いもしなかった。その女らしくないのがチビ達のためになると思えば、この程度の屈辱には耐えられる。自分も昔は養われた身だ。しかも、魔術など、生きていくのに十分な教育をしてもらった。いくら感謝しても足りないほどだ。
 他のちゃんとした男の候補者を押しのけて私に話しが来たのは、この子供ならではの不健康な容姿もあるが、傀儡術という高等で便利な魔術の使い手であったためである。
 魔術兵としてなら活躍しても病弱は通せるし、病弱だからこそ魔術に精通していると弁解できる。
 私達を育ててくれたおばあちゃんは、若い頃はかなり高名の魔術師で、子供は読み書き計算と魔術の基礎程度は教えられる。その中でも私は変わり種の魔術を得意とするタイプで、才能を伸ばせば女であっても稼げるようになるからと、私は夜遅くまで勉強した。
 実際に、大きくなってからは魔物を退治したり、魔穴封じをしたりと、普通に稼ぐよりははるかに実入りがよかった。それでも魔物などが常にいるわけでも、魔穴が簡単に見つけられるわけでもないので、大した生活向上にはならない。普通の一家族だけならそれなりに暮らしていけるが、必要な金額は桁が違う。
 この身代わり話が来たときは戸惑ったし無理だと思った。
 それでも髪を短くしてみれば、扁平な胸と尻に、男のように脂肪のない手足のおかげで、どう見ても貧弱な男だった。魔物は夜に活動するから自分も夜型になり、日に焼けず色も白いので、我ながら本当にひ弱そうだった。髪の長さって、意外と女らしさを維持するには大切だったのだなとその時初めて知った。
 見た目だけなら無理でもないと分かったら、ぼろぼろの服を着て壊れた玩具で遊ぶチビ達を見て、腹をくくった。これを引き受けたら、報酬の他に服や玩具がもっと寄付される。
 もう少し女らしくとかなってみたいけど、数年は我慢だ。同じ場所で育った同年代の、私よりも胸やら尻やら肉付いてくびれも出てきたところに、手作りのアクセサリで飾って男の子と語り合う女の子を見て、ちょっと心が揺らぎかけたけど、我慢だ。
「今日はドキドキしたね、るーちゃん」
「お願いですから、挙動不審にならないで下さいね」
「だめだよ、るーちゃん。僕らは親友なんだ。敬語はダメだよ」
「ああ、分かっている。だから頼むから、もしも女と言われても一切口にしないでくれ。すべて私がフォローするから」
「るーちゃんは世間知らずだから分かってないよ。男がどんなものなのかっ! 小さな子達とか、兄妹みたいに育った人達とは違うんだからね!」
 確かに兄達はここの男達とは別だろう。私にとっては信頼できる男達だ。ここの男達は信頼できる男もいるだろうが、悪党もいるだろう。
「君よりは客観視出来ている自信はある。そりゃあ貴族のことは分からないけど、ルーフェス様だって社交界には一度も出たことはないし、誰も顔を知らないし、顔は似ていなくもない。だから君さえポーカーフェイスでいてくれれば怪しまれることはないんだよ」
 本当に心配なのはこの少年の素直さ。個人的には好ましいと思うが、今は不安しか生まない。
「もっと狸になってくれ。猫を十匹ぐらい被ってくれ。私の願いはそれだけだ」
「僕はるーちゃんが心配なんだ。えっちゃんにるーちゃんをしっかり守るようにって頼まれたし」
 えっちゃんとは私が成り代わっている本人の妹であり、このお坊ちゃんの婚約者だ。見た感じでは仲睦まじかった。なぜかその妹に懐かれたのは、きっと魔術を使い彼女に大空を体験させたことが原因だろう。同じほどの歳か、少し年上のはずなのに、私と違って可愛いのだ。
「るーちゃん、ルーフェスは寂しくしていないかな? 風邪とかひいてないかな?」
「ルーフェス様と視界共有をした時は体調がよろしいようでした」
 私は本人に連絡を取るため、もしくは確認をとらせたり、書類にサインをさせるときのために、ルーフェスと視界や身体を共有するための術を使っている。常には不可能だが、日に一度は可能だ。面白そうな物があったとき、向こうの調子が良さそうなら見せてやることにしている。私が得意とする傀儡術の応用だ。
「知らない場所を見られて、喜んでおいででした」
「そっか。ここは珍しいよね。ルーフェス喜んでるだろうな……。
 あ、でもだめだよるーちゃん。自分に様付けしたら」
「今だけだよ」
 ルーフェスは自分。様付けをしたらルーフェス様。その方が分かりやすくていい。
「るーちゃん、明日から訓練が始まるけど、辛かったら言ってね。僕が出来る限りのことをするから」
 たぶん、出来る限りのことをするのは私の方だと思う。このいかにも体力のない華奢な身体が、口とは逆の事を物を言うのだ。訴えてくるのだ。体力ありません、と。
 多少は剣を習っているらしいが、それもかなり怪しい。支給された剣を持ったときは、ふらついていたから。
「私としては、できるだけ隅の方で小さくなっていて頂ければと」
「大丈夫だよ」
 その自信はどこから出てくるのか教えて欲しい。
 本当に、頭が痛くてかなわない。
 これからしばらくはこの男と寝食共にすると思うと、それだけで疲れる。疲れるが、これが仕事である。

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2008/01/06   詐騎士   16コメント 4     [編集]

1

 この世には、金で買えぬ物は少ないという。
 私は金で買われた。これも立派な身売りの一種である。ここに来るまで何度も空しくなったが、それでも自分は可愛らしい少女のような少年に並び、そこを眺めている。
 私は騎士、というものになった。
 騎士などというと聞こえはいいが、戦争するか、魔物や賊を殺すのが仕事だ。
 それでもやはり感慨深くある。自分が騎士としての扱いを受けるなど、あの時まで考えたこともなかった。
 騎士になったことになっているのは、ルーフェス・オブゼークという一人の少年だ。地位は貴族の中では中の上。
 私がルーフェス様の身代わりで騎士になった理由は色々とあるのだが、本人が騎士になれなかった理由はいたって単純だった。
 先の短い超虚弱体質なのである。いつ死ぬとも知れない貴族の二男坊。それが本来のルーフェスという少年。
 貴族というのは、男児が複数いれば兵役義務が生じる。国のおかげで貴族としていい生活をしてるんだから、国のために働けということだ。国とは民やら何やら含めて、その土地の価値が国の価値であり、それを余った連中で支えるのは当然である。
 それでも本来なら金でどうにかなるような家位なのだが、今は立場が弱いらしく、一人は出さないことにはどうにもならないらしい。しかし問題の超虚弱体質の次男の上は跡取りである。健康ではあるが頑丈とは言い難いタイプで、とても訓練に耐えられないだろう。そして下にいるのは女の子だけ。
 だから私はそのか弱い少年達の身代わりとして雇われた。
「大丈夫だよ、るーちゃん」
 私の隣に立つ少年が励ますように言う。
 私の本名はルゼというのだが、偶然にも頭が似たような音だというだけで、違う名前で呼ばれるよりは反応しやすいだろうと、このように呼んでくれている。何十回と私自身が訂正してもだ。
 ルーフェスという少年を彼はよく知っているから、君をそう呼ぶにはやはり抵抗がある、と。
「僕が守ってあげるからね」
 この少年と初めて顔を合わせたのは、実は一週間前である。
 私の仕事にはこの少年の護衛も含まれている。彼は長男だが、家の事情でまっとうな騎士として手柄を立てなければならない。
 彼はこんなに可愛らしくても、私が身代わりになった少年達よりもはるかに健康で、毛艶がよく、明るい。そして私の身代わり少年の妹とは婚約者である。つまり、私が成り代わるルーフェス様と彼は義理の兄弟になる予定なのだ。将来があるからこそ、彼には手柄がいるのだ。
 つまり私は両家によって雇われている身代わり兼護衛である。
 その報酬としてけっこうな支援を受けるので、ほとんどの事には文句はない。これで私が育った施設に恩を返せた。たぶんそれでも将来的に足りなくなるが、それはそれだ。なにせ孤児というのは減る事がない。誰かが出ていくと誰かが入ってくる。親に捨てられた子供は珍しくないし、魔物に両親が殺されるなど珍しくもない。際限がない。
 それでも私はこの仕事で、世話になった者達に対する恩は返せたはずだ。心残りがなくなる。
「るーちゃんは何も心配しなくていいからね」
 なおも言いつのる女顔の少年。心配しなくていいなどと、その口でよくも言う。
「ゼクセン、君はとりあえず口を閉じてくれ」
「大丈夫!」
 大丈夫でないのはお前だと殴りつけたいが我慢する。
 この口の軽い少年は、親友の身代わりになった私を守ると使命に燃えているのだが、それが目立つ目立つ。
「ははっ、お嬢ちゃんが守るってよ」
「おっ……」
 通りすがりの少年に言われて、ゼクセンの顔色が変わる。
「る、るーちゃん……るーちゃんはこんなに凛々しいのにっ」
 彼は私を見て狼狽えた。
「一応言っておくが、お嬢ちゃんとは君のことだぞ」
「へ?」
 言葉に詰まるゼクセンの手を引き、出来上がりつつある列に並ぶ。
 未だに悩み続けるゼクセンが余計なことを言わないように見張りつつ、集合時間十五分前の、全員が等間隔に整列し終わった頃、よくわからないが上官のなかでも偉そうな人物がやってくる。
 十五分前なので少しだけ気を抜いた様子で、声をかける前に周囲を見回している。しかし、こちらに目を向けて固まった。
「なぜ女がいる!?」
 やはり言われた。頭が痛くなる。
「ええ!? るーちゃ、バっ」
 余計なことを口走ろうとするゼクセンの後頭部を叩く。
「こうなると思っていた。もういっそ脱げ」
「ええ!? 何で!?」
 ごちゃごちゃ言っている間に上官が近づいてくる。
 この究極の女顔の天然ボケは、なぜか自分の容姿を自覚せず、私ばかりを心配する。私に関しては、まったくもって心配はないのだ、この男がいる限りは。
「何をしている!」
「男のくせに紛らわしい顔と体格をしていて申し訳ありません。皆に誤解のないよう、今から一度脱がせます」
 私はおたおたするゼクセンを叱り飛ばし、無理矢理鎧を脱がせようと試みるが、そのやりとりで女がここにいるはずがないと我に返った騎士がはっとして私の手を止めた。
「いや、すまない。私がどうにかしていた。男ならそれでいい」
「よろしいので? 先ほどから似たような声ばかりが聞こえてくるので、一度脱がせてしまった方がいいと思ったのですが」
「いや、そこまでする必要はない。彼にとっても屈辱だろう」
 私はゼクセンから手を離し、上官に一礼する。疑われた女顔は意味が分からず目を白黒させる。
 実はここに来るまではかなり冷や冷やしていた。
 しかし初日、女のような扱いを受けたのはゼクセン。守らなければいけないのに、余計なことでいらない敵を作った。しかし、それ以上のメリットが私にはあった。
 誰も疑わない。
 女であるのは私の方だとは。
 ほんの少しだけ納得いかないとも思うが、男のように髪を切り、ゼクセンよりも背が高く、ゼクセンよりは男のような顔をしている私は、まだ一度も疑われていない。
 有り難いのか、屈辱なのか。
 はっきりしないが、私的には一つの山場を乗り切ったと言える。


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2008/01/05   詐騎士   15コメント 0     [編集]

寄付金のため病弱な貴族の少年に成り代わり、男装し偽りの騎士になった少女の王道で横道な詐騎士ライフ。

詐騎士 発売中
書籍購入種様向け番外編(パスワード入力画面に問題があります。パスワードは変更される事があります)

書籍化のため、4部までを削除いたしました。
書籍はストーリーはほぼそのままで、文章がかなり変わっています。
全8巻の内容で、現在その後の番外編を連載中です。



キャラクタ紹介(ネタバレあり)

1部 詐騎士編

書籍1、2巻の内容です。
1巻は詐騎士な日常。 2巻は不正暴きに行って、なぜか商談しています。
アルファポリスさんに50ページ分の見本があります。



1.5部 詐欺師編
3、4巻の内容です。掲載時は他のキャラ視点の番外編集だったので、内容は変わりませんが、ほぼ書き下ろしに近いぐらい変わります。(元は400ページの分量がが600ページになります)
ただの詐欺師になった女装のルゼが、もう一度騎士になるまで。(一番ルゼが無双してます)

2部 聖騎士編
書籍にするときは時系列を変更し、一人称に変更します。 順番が変わるので、すっ飛ばされてるエピソードとかも出てきますがご容赦ください。


3部 聖女編
7巻分、傀儡術師たちのその後と、エリネの地下訪問編です。

4部 恋愛変
ルゼとギルの結婚式。8巻の内容です。


詐騎士その後
ルゼ達以外の恋愛の決着などを書きます。

身分違いの恋の行方 ルゼ視点  1 2 3 4 5
身分違いの恋をされ  ティタン視点 1 2 3 4 5 6
フレーメ 1 2 3 4 5
竜騎士 1

番外編 妖族 ルゼゲーム
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2008/01/04   詐騎士   76コメント 87     [編集]

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